読書の秋とはよく言うけど、そこまで本ばっかり読まなくてもいいじゃん。と、口を尖らせると、だってもうすぐテストだよ。と、当然のように返された。知ってるけどさ、そりゃあ今週末がテストってことくらい。私の成績が決して良くないことくらい。 「じゃあ勉強しなよ。ほんとに手遅れになっちゃうよ。ハナコ、こないだのルーン文字学のテスト、何点だっけ?」 「どんな数字をかけてもゼロになっちゃう点だけどさ…。なんか、ね、やっても無駄だって思っちゃうの。見返りがないと言うか…」 リーマスは一瞬ぴたりと止まって、はぁ、とため息をついた。それから口を開く。進級できなくてもいいの?と。 「ダメ、ヤダ、イヤ」 「だったらちゃんと勉強しよう、ね?」 「えー……はぁ、わかった…」 いいこ、いいこ、とリーマスはにっこりするとまた本に目を落とした。彼の長い睫毛が揺れるのを眺めるのもいいけど、本当に留年したら洒落にならない。薄っぺらい鞄に手を突っ込んでルーン文字の表紙の教科書を取り出した。 "次の文を訳せよ" …は?知らないよ。リンゴの木がなんだとか、人間と犬がどうだとか、自分で訳しなよとか思う。あーあー、ううん。いけない、いけない。これだから駄目なんだよね、私。パラパラとページを戻って法則を確認。ああ、リンゴの木にフクロウがとまっていたのか。なるほど、ふむふむ。 「リーマス、できたー」 「ん、ほんとに?」 羊皮紙を持ち上げると、まだ乾いていないインクはたらり、と垂れたけど、リーマスは頷いた。それから―― 「よくできました」 少し湿った熱が、頬に触れた。 見返り 「君もバカだね、リーマス」 「うん、心からそう思うよ」 「リーマス、見て見て!出来たよー!」 「同情するよ(リリーじゃないからね)」 「はぁ、だったら変わってくれよ」 「ほ、ホラ、ハナコってかわいい子だと思うよ。行ってこいよー」 あれから、ハナコの成績はバカみたいに良くなっていった。だけどわざわざ勉強が一通り終わる度に僕にキスを強請るのは、どうにもならない。どうにかしてくれよ、全く。 end. 20090907 |