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□空の嫌味
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僕は空が嫌いだ。いつも僕の視界にいるくせに、触れさせてくれない。まぁ、空に触れたいとかそういうわけじゃ全くなくて、どっちかと言えば嫌味を言われているような気分と言えばいいのか、結局のところ分からないけどやっぱり嫌いだ。


例えば僕の視界にずっといるわけじゃないけど、それでも会ったら何時でも抱き締めさせてくれるような君の方が、空なんかよりずっと大好きだ。だけど遠くに行ったりゼロ距離にいたり、つまりいる場所がまちまちなせいで不安になったりする。だからいつも見えてやがる空の存在が嫌味に思える、と僕は君に告げた。


「空みたいに、ずっとレギュの視界にいろ、と?」

「いてくれるだけじゃ、嫌です」

「ずっと一緒にいて、イチャイチャさせろ、と?」

「…表現が嫌です」

「ずっとレギュの…手の届くところにいろ、と」

「其の通りです」


僕は30センチ左にいたハナコを抱き締めた。つまりはゼロセンチ。


「どうして空を――」

「はい?」

「…何でもない」



空 の 嫌 味




『どうして空と比べたの?』と聞こうとして、やめた。きっと、レギュは気付いてないけど、私と空が似てると思ってるんじゃないだろうか。無意識的に対比したんじゃないだろうか。それは本当は空が好きなのか、私の事が嫌いなのか、どっちかは分からなかったけど、こんなことを考えてたら不意打ちのキスをされたから、今は別に考えないことにした。レギュが空みたいになってしまったら考えよう。私は悶々とした考えを脳味噌の隙間に押し込んで隠した。



end.
20090726


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