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□空飛ぶナニー
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「今日、晴れてるけど?」

「ふふふ〜いいのっ!ニッポンからママが送ってくれたのよ!」


ハナコは閉じられていた赤いストライプの傘を、ばさりと僕に向けて開いた。そして、くるくると回す。ああ、雨が降ってなくてよかった。さもないと今頃びしょ濡れだ。


「ね、可愛いでしょ?」

「なんで持ち歩く…」

「えー、だってせっかく送ってくれたのに。持ってなきゃ勿体ない」

「ハナコ、意味わからない」


傘はハナコの頭上にさされていた。生憎、遮る雨は降っていなかったが。


「レギュラス!見て見て私、メアリーポピンズみたい?」

「メアリーポピンズの真似事をする幼稚園生みたい」

「あーん、それじゃあただの私じゃない!」

「あ、否定しないのか、幼稚園生」


ハナコは僕に背を向けて、大股でスキップしながら進み始めた。ぽーん、ぽーんとかいう擬音が付きそうなくらい、軽く弾むように。まるで、傘の下に上昇気流が生まれたみたいに、軽く大きく。仕方ないから、僕もハナコを追いかけて走った。


「ハナコ!ストップ!」

「?」


足を止めて振り返ったハナコの手を掴む。思ったより息が上がった、ハナコはケロリとしていたが。
本当に、メアリーポピンズのように飛んでいってしまうんじゃないかと、ちょっと思った。


「レギュラス?なあに?」

「いいえ。やっぱりメアリーポピンズみたいだと思って」

「あらまぁ。私別に怒って先に行ったわけじゃないよ?別にお世辞みたいなのはいいよ。ただスキップしたくなっ――」

「お世辞じゃない。あんまりよくない意味で言ったんだけど?無邪気すぎて気付いたら迷子になってそうだと思った」

「あははー、ありそうだからヤだなぁ」


へらりと笑ったハナコは僕の手を握り返した。照れたように目を細めるハナコに、僕らにしかわからない合図を送ると、ハナコは頬を染めて目をつむった。メアリーポピンズの傘の下で、僕らの陰は重なった。



空飛ぶ、



end.
20100924


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