「まさかお前がこんなに長生きするとは思わなかったよアブラクサス」 「まさか貴様がそんなに早くに死ぬとは思いもしなかったぞ、オリオン」 「俺、覚えてんだぜ。お前がかつて俺に浴びせた言葉」 「そんなもの、腐るほどあるわ。皮肉なことに、な」 「『貴様のようなゴキブリ野郎は図太く長生きするんだろうな、ゴキブリみたいに』」 「……」 「『そんな馬鹿なことばかりしているから、馬鹿に色々なものへの耐性を身に付けて、馬鹿に長生きするんだろう?この馬鹿』」 「…………」 「『僕は長生きはしたくない。しわくちゃのハゲた格好を世間に晒すなんてアホな真似、アホのオリオンにしか出来ないだろうな』」 「………………」 「そんなこと言ってたお前もやっと死んだかあ!俺思ってたけど、ハゲた格好をうんぬん言ってたときのお前、すでにハゲが進行して――」 「アバダケダブラ!」 「残念。死人にアバダはききまっせーん。俺、死にまっせーん」 「どうして死んでなおお前に会わねばいけないんだ……神は俺を見放したか」 「いや、お前、天国に来れただけ神に感謝しろよ。俺、お前は絶対地獄行きだと思ってたぜ」 「安心しろ。お前がいる場所なんて、俺には地獄にしか思えないから。初めて読みが当たったな、オリオン」 「違いねぇ」 * アブラクサスじじいとオリオンじじいの2人が、こんな話を天国でお酒呑みながらしてたらいいなあ。 |