Novel

□加虐的マゾヒズム
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視界を満たす赤

酷く澄んだ雫の音

消えてゆく体温に、掠れゆく断末魔





赤い、紅い、夢





引き千切られた指で

へし折られた鼻で

切り裂かれた咽喉で

抉られた眼球で



自らの肢体を噛み砕く



酷く甘美な


夢、を見た





[加虐マゾヒズム]





 滴って、ぽたり、と澄んだ音を立てる紅い雫。
 水源は咽喉。
 目の前に転がっている男の喉笛。

 黒く濁り始めた血溜まりの中で、哭羽(コクウ)は赤く染まった白刃を握り直した。
 切り裂く快感を知っているカラダは、それだけで悦びに打ち震える。

 口許が不自然な笑みを作ったまま、

 ひゅうひゅうと、裂かれた咽喉で生き続けようとする男の体に、


 小さな刃を突き刺した。
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