novel*その他

□...Your name
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膝を抱えてカタカタと震える昌浩に、見回りから帰ってきた六合がッハとして駆け寄ってくる。

「昌浩!」

背中を優しく摩っても、まだ震える昌浩の顔面は蒼白で、明らかに何かがあったことを告げる。

「・・・六合・・・俺・・・俺・・・」
「昌浩・・・いい、何も、しゃべるな・・・」

昌浩の、以前よりやつれた頬に一筋の涙が光る。

「俺、俺・・・!」
「・・・昌浩」

きっと騰蛇と何かあったのだろう。そうでなければ昌浩はここまで怯え、悲しむことなはい。
その小さな背中をさすっていた腕からそのまま昌浩を抱き込む。
力強く。だけど壊れないように。

「昌浩・・・昌浩・・・」
「うっ・・・くぅ・・・ひっく・・・」

何度も何度もその名を呼ぶ。昌浩の涙は止まらない。
昌浩は目の前にある六合の腕に掴まって涙を零す。右腕が湿っていくのがわかる。

どのくらいそうしていただろう。
昌浩は少し落ち着いたのか、真っ赤に腫らした目をして六合の腕から顔を離した。

「・・・ごめん、も、大丈夫、だから」
「・・・昌浩」
「・・・ごめん・・・」
「昌浩、俺の前ではそんな無理しなくていい」
「・・・え」

泣き腫らしたその顔を見て、こんな姿にした騰蛇にどうしようもない怒りが込み上げる。
だが、昌浩はきっと、小さくわらって「俺のせいだから」と言うだろう。
それが、昌浩の罪だと。

「俺なら昌浩をこんな風に悲しませたりしない。辛い思いをさせない。ずっと・・・ずっと一緒にいる」
「六、合・・・?」
「だから、だから・・・俺のところに、こい・・・」

普段はあまり喋らない寡黙な六合の言葉に、思わず息が詰まる。

「昌浩・・・」
「・・・ごめん・・・六合・・・」

それでも、自分には紅蓮が必要なのだと、そう小さく笑って答える。

「・・・昌浩・・・」

小さく、ごめん、と何度も謝る昌浩の言葉は、いったい誰に向けれらているのか。

「昌浩、それでも、辛くなったら俺のところに来い」
「え・・・」
「辛くなったら、何度も、何度も俺が慰めてやるから・・・だから、俺の見えないところで泣くな・・・」
「・・・六合・・・、・・・ありがと・・・」
「昌浩」

ちゅ、と、涙の通った跡がある頬に口付ける。
何度も、何度も。

「・・・ん、六、合・・・」





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