novel*その他

□夕日の光さす廊下で愛の告白を
2ページ/5ページ


暗くなりかけている廊下を二人は歩く。

「すまないな、手伝わせてしまって」
「んー?なに、あんくらいいって」

前を歩く藤丸は、自分の言葉にいつも笑って返事をしてくれる。

どくん、と、また心臓が跳ねた。

前々から自覚していたことだ。
今やあまり抵抗を持たず、この感情を受け入れている。受け入れているが、世間
的には受け入れられないものでもあった。

「音弥ー、さっきからどうした」

好奇心旺盛な彼は自分を下から見上げてくる。

いつのまにこんな近くに来たのかと反射的に体を後ろに引いてしまった。

これ以上藤丸の顔を近くで見るのは危なかった。
自制、できそうになかった。

「…っ」

後ろに引いたが、いつの間にか自分の目の前にいる藤丸を抱き締める。
自分は藤丸の肩に顔を埋めてしまって藤丸の表情が見えない。それは藤丸も一緒
だろう。

「っ、な、どうしたんだよ」

「……」

いくら藤丸に呼ばれても自分はずっと黙っていた。
そんな重い空気が流れる。

「…藤丸…」

やっと重い口を開くと、呼ばれた本人は体をびくつかせる。

「な、なに」

「お前さ、男にこんなことされて気持ち悪いと思う?」

「は、はぁ?」

「答えて」

今日の昼休み、外でサッカーをする藤丸を自分の教室の窓から見ていた。
そんな時、すぐ後ろでたむろっていた男女の会話がたまたま耳に入った。

『ねね、男同士のレンアイってどうよ』
『ボーイズラブ!ヤでしょ、まさかあんた…そっちの人…』
『おいおいふざけんなよーなんでそんな気持ち悪いことしなきゃならないんだ』
『だよねー。男同士とかまじ引くよ』
『俺はやっぱ折原センセみたいなボンキュボンがいいなぁー』
『うわーやっぱ男はああいうのがいんだー』
『さいてー』

そんな笑い声のある他愛もない会話だったが、その感情を抱いてしまっている人
にとってその言葉は矢で心臓を打ち抜かれるよりも痛い。

「…んー…、まぁ、そうだな」

ぐさり、そんな音が聞こえた気がした。

「…でも、音弥だったらいいかなー」

肩口に埋もれた目が開く。

「…どこまで」
「え」

「どこまでだったら許せる…」

顔を上げると、きょとんとした彼の顔が目の前にいっぱいに入っている。

「どこまで、って。なんだよーもしかして音弥、俺のことラブだったりしてー」

藤丸にとってはあくまで冗談のつもりなのだろう。
だが、今の自分には何の冗談にもならなかった。

「ああ、好きだよ。誰よりも愛している」

ああ、やはりそんな反応する。
藤丸は完全に混乱している表情をしていた。
ファルコンとしてTHIRD-Iのアルバイトをしている時の表情に比べたらすごいアホ
面をしているのだろう。

「…は、はぁ?ま、まじで言ってんの…音弥」

「俺が嘘をつくとでも」

「思わないけど…」

完全に狼狽する藤丸から、藤丸の体にまきつけていた自分の腕を外す。

「藤丸は、俺がお前に協力するのは遥ちゃんが好きだからだと思ってるだろ」

驚きながらもその瞳は「うん」と肯定していた。

「…俺は、藤丸、お前が傷つくのが嫌なをだ。もしも藤丸に何かあったら俺は普
通じゃいられない。だからいつでも守れるように傍にいる」

「…」

「…ごめん」


.
次へ
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ