novel*その他

□だって愛してるから
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試合終了を知らせるブザーの音が、無情にも体育館内の空気を震わせた。
いくら見ても変わらない電光掲示板の数。
結局は越えられない壁。
そうだよ、あの火神ですら越えられなかった光という壁を、俺は頑張って越えようとした。
いっそ、壊して突き進んで、その先にいる彼を抱き締めたかった。

沈むチームメイトたち。不思議と涙は出ない。
湧き上がる歓声の中に混じるあいつの名前。ムカつくけど、心は冷静だ。
先輩が労いの言葉を肩を叩くのと共に送ってきたが、頭の中には入ってはこなかった。
まるで全ての音や空気が一枚硝子の向こうにあるような、そんな感覚。

ああ、終わっちゃったんだな。
自然と上を向くようになる。


「――黄瀬くん…っ!」


煩わしい歓声の中、硝子で隔てられた俺の中に入ってきたのはやはり君で。
意識しなくとも目で君を見つけて。



――ああ、泣きそうな顔してる。


――抱き締めたいな。



きっと俺はへらっと笑っていたのではないだろうか。
だけど、泣きそうな君を見たら無理矢理にでも笑うしかなかった。









「俺、青峰っちに勝って、それで、迎えに行くっスよ」
「誰をですか?」

確かあの時、わかってるクセに。と内心苦笑していたんだっけと思い返す。

「勿論、黒子っちを、スよ」

少し冷えた頬に手を伸ばして答えた。
その返答がまるでわかっていたかのように、黒子っちは平然としていた。

「そうですか。せいぜい頑張って下さい」

そっけなく言い放つ。他人が聞けば、距離を置いたような、ソレ。
だけど俺が頑張るには充分すぎる言葉で。

「頑張るっスよ」

だって愛してるから。
俺は本気だよ?


黒子っち、

青峰っち、


――火神っち、









そうだったね。
試合前黒子っちと偶然会ったその時そう宣言したじゃないか。心の中では少なくとも3人に。

俺と同じように大量の汗をかいて、だけど余裕そうな笑みを浮かべたあいつが前から歩いて来た。
俺も俯きながら真っ直ぐ進む。
互いに目は合わせない。



「テツは俺のだ」



言い返せない自分が悔しい。
再び黒子っちの方に目を向けた。そこには変わらず君がいて。

悲痛に歪めた瞳に、俺の視界まで歪んだ。





(でも、でもね)





俺は諦めないよ。





(愛してるから、奪ってみせる)
(諦められるワケがないから)
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