novel*その他

□神を継承する者
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「知ってますか、アルファさん」

旅の途中での宿でふと、思い出したように話し出すレトに「あ?」とアルファは耳を傾けた。

「とある国で『アルファ』とは『神』という意味があるそうです」

まるでアルファさんが神様みたいですね。とにこっ、と笑うレトにきょとんとする。
すると、ぷ、と小さく吹き出す音が聞こえた。

「ちょ、なんで笑うんですか」
「じゃぁお前はさしずめ、『神を継承する者』、だな」
「は?」

今度はレトがきょとんとする。
そのアホ面にまた小さく吹き出す。

「だからなんなんですか!」

意味わかんないです!というレトに、

「お前、『アルファ』はわかったのに『レト』はわからないのか」
「・・・」

はぁ、と大仰にため息をつくアルファに、むかつくがその姿が似合っていて余計にむかつく。
むー、とふてくされてアルファを睨んでいたレトと、アルファが目が合う。

「『レト』ってのは元の形が『retare(レターレ)』つって意味が『継承する者』。
 俺が『神』なら、俺の下についているお前は『神を継承する者』ってこと」

そうなんねぇ?
にや、と笑うアルファに、思わず顔に熱が集まった。

「っ!」
「タコみてぇ」
「う、うるさいですッ!」
「でも今のお前じゃまだ無理だなぁ」

胸に小さな痛みを感じた。
そりゃわかっていたことだ。今の自分じゃアルファの足元にも及ばないということに。
何も言い返せなくて下を向いていれば、

「だが、お前は俺が認めたヤツだ。だからせいぜい頑張ってくれよ」
「ッッッ!!!!」

ぼぼぼ、とまるで小さな爆発音のように顔を真っ赤にするレト。

「おー、お前すっげぇ顔赤いぞ。んー、お前ってどこまで赤くなれんのかね?」

子供のように笑うアルファは可愛いしかっこいい。

待っていて下さいアルファさん。
いつか、いつか必ず貴方よりも強くなって、貴方を守れるような男になりますから。
そうしたら、そうしたら、貴方の横を、歩いてもいいですか?

「あー、腹減った。なんか作れよ」
「まったくもう」

その傍若無人さには少し呆れるけど、アルファが今そう頼るのは自分だけで。
それだけでもなんだか嬉しくて。

「・・・頑張れよ、レト」

部屋から出て行くレトに、小さく、本当に小さく掛けられた言葉。
ひとり言のようだけど、確かにレトに向けられた言葉に、思わず叫びそうなぐらい嬉しくなって。
きっとさっきなんかよりももっと赤いだろう顔に気づかれたくないから聞こえなかったフリをした。





⇒あとがき&名前についての補足
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