novel*鋼錬
□Sexual desire processing
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最初はただの性欲処理の相手だった。
相手は中性的な顔立ちで、その体は未発達なものの、まさしく男のそれだった。
決して女に困っていたわけではない。
経験がないから練習台になってくれとかというわけでもない。
ただ、彼は部下で男で、失敗しても子供なんて出来るわけでもなく、部下だから変なところで気を使う必要がないから楽だった。
始まりは自分から性欲処理の相手として夜、付き合ってほしいと率直に言ったのが始まりだった。
最初はさすがの彼もその発言に戸惑ったものの、彼が欲しがる文献や情報と引き換えにの関係として始まった。
彼自身、私が女でヤると後々面倒になるからと言ったから変な期待はしていないだろう。
されていても困る。
言ったことはないが、もしかしたら彼は気付いていたかもしれない。
男と寝るのは別にただヤりたいだけではない。
男は女と違って一回のセックスでかなり体力を消耗する。だからすぐに深い眠りにつくことが出来る。
実質、それが本音だ。
彼が情緒の最中に見せる表情はとても綺麗だと思う。
元々男には興味なんてこれっぽっちもなかった私でさえ、その顔に欲情してしまった。
男の喘ぎ声に自分の雄が反応した時はとうとう狂ったのだと思ったこともある。
だが、それならばそれで好都合だと思った。
萎えてしまう相手だったらその場で吐いてしまいそうだった。
反応するなら、これは自分の好きな相手のように扱えば、こちらももっとその気になるのではないかと思って。
最中、何度も愛を囁くようになった。
別に自分が気持ちよくなるために言ったに他ならない。
――はずだった。
情事の終わりはいつも相手が気絶して終わる。
そして気絶している間に情緒の跡の処理をする。
彼の体内に残った白濁の液を掻き出して、シーツを替えて…と。
そしと目を覚ますとベッドの中に彼の姿はない。
それは情事の最後はいつもそうだった。
だから朝を共に迎えたことはない。
最初の頃は出て行くとき気配でわかった。でも最近は深く眠ってしまって気付かないまま朝を迎えるようになった。
それでもいいと、思ってた。
だけど愛を囁いている内に、朝がこなければいいと何度思ったか。
それが、本気の恋だと気付いたのは、そういう関係になってちょうど半年目の春だった――。
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