バサラ小説
□約束は守ったり破ったり
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「あのさ…片倉の旦那」
「おい…いきなりなんだ。名前で呼べと言ってるはずだが…」
「別れよ」
「…は?」
ピシリと小十郎の表情から体の動きまで固まったが、佐助は構わず満面の笑みを浮かべもう一度別れようと言った。
「またいきなり…なんだ?」
珍しく動揺の色を見せる顔に、佐助は腕を組み笑みを崩さずにソファに座っている小十郎を見下ろした。
「いきなりじゃないよ…そもそも俺と片倉の旦那じゃあ合わなかっただけって話…片倉の旦那、ここの部屋の鍵渡して」
「まっ待て…俺が何かしたか?」
その言葉に笑顔を崩して佐助はキッと小十郎を睨み付けた。
「何かしたかって?じゃあ言わせてもらうよ。まず勝手に合鍵作った事、あんたならやりかねないとは思ってたけど犯罪だよ?それも勝手に入ってバイト帰りに疲れた俺様なんかに構わずあんた容赦しないし…次の日の学校辛いんだからね?後はこないだ風邪ひいて死にそうな俺様にあんたマンションに来いとかほざきやがったよな?歩いてるだけで呼吸困難になったんだからな…ちょうど政宗に会ったからいいけどあのまま歩いてたら間違いなく死んでたよ。あと、バイトの無い日に友達と遊ぶ貴重な時間にもかかわらずあんた邪魔してくれちゃったりしたよね?結構遊べなかったりしてんだから邪魔すんなよ…あとあんたのせいで友達少なくなったんだよね…責任とってくれるの?結構重大だよ?あとは…」
つらつらと出てくる佐助の文句に小十郎は口を挟む余地すら許されず…。
ただ話を聞くだけしか出来なかった。
それから数十分ほど文句をつらつら長々並べたててからまた満面の笑みで、
「だから別れて」
と佐助はきっぱりはっきりズバッと容赦なく言った。
しばらく二人の間に沈黙がおりる。
「…さす」
「いつまでここにいるつもりなんだよ…早く出て行け」
ぐいぐいと小十郎を立ち上がらせ入り口へと押していく佐助に、
「待て、佐助…話を…」
とこれまた珍しく慌てた声で小十郎が何か言おうとするのを佐助は遮って玄関まで連れていくとドンッと背中を強く押した。
「あんたなんかしらねぇよ!!もうっいいから出て行け!!!」
「佐助」
「ああ苛つくなぁもうっ」
「佐助」
「何だよっ」
ぐいぐいと玄関のドアを開けてなんとしても追い出そうと強い力で押し出すのを小十郎は動じずに肩を押す佐助の腕をグイと引っ張った。
そのまま抱き寄せ暴れる体を押さえ込む。
「っ…離せよ!!!あんたなんか嫌いだっ大嫌いだ!!!」
「悪かった…佐助…悪かったから」
「反省してもいないくせに言うなよっ離せって」
「…悪かった…佐助。…そうか構ってくれないのはそんなに嫌だったのか」
「ちげぇよ!!!自分勝手な振る舞いが嫌なんだよ!!!人の話はちゃんと聞け!!!」
もう嫌だとじわじわ浮かんできた涙を急いで佐助は拭った。