バサラ小説
□余計に苦労が増えました
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「なら猿飛の気配と似てるってだけなのか?」
「そうですっそうなんです!!!」
その言葉に必死に頷けば思いっきり相手の眉間に皺が出来た。
「気にくわねぇな」
急に不機嫌に…いや先ほどから何処か不機嫌だった小十郎が低くそう呟く。
ギリリと掴む力が強くなり痛いと悲鳴を上げた。
「なら…烏に戻ってみろ」
「えっ…」
「烏なんだろ?戻ってみろよ」
またなんて難題をと佐助は泣き出しそうになった。
色々な姿の人になら今の自分にだって変化は出来る。
ただその分体力はなくなるが…。
しかし人以外となるとそれは難しい話であって…出来れば諜報などもまた簡単に出来るようになるからやりたいことにはやりたいが…。
「早くしろ」
未だ成功してない術を今成功させるなんて出来やしない…だがやらなくても失敗してもどちらにしろ小十郎の怒りを買いそうだ…。
「なら…手を離していただくと有り難いんですが」
「何でだ」
「印が結べません」
これで離してくれたら良かったのだ…しかし小十郎はなかなか離してくれなかった。
「あっあの…」
「何処までも隠す気なんだな」
「いっいやだから…」
「わかった…なら一ヶ月分のあいつをお前で補給させてもらおう…烏」
何なんだ?補給?
頭の上に?マークをいっぱい出している佐助の顔を上に向かせた小十郎はそのポカンとあいた唇に噛みつくように口付けた。
「んん?!」
驚いて入ってきた舌を思いきり噛んだ。
「っ…」
「あっあんた!!!何考えてんだよ!!!」
「ほら…やっぱり猿飛じゃねえか」
「あっ…」
ハッとして口を閉じるがすでに遅い。
「お前がいくら姿や言葉で誤魔化しても俺の目や耳は欺けねぇよ」
「いや…忍としてはそれは凄く痛いです」
やっぱりこの人苦手…
そう佐助がため息をついていれば、で?と小十郎が先ほどよりも浅くなった眉間の皺をまた作りながら佐助を見下ろした。
「いつになったら戻りやがる?」
「いや…その…実はですね…忍仲間の才蔵って奴に…新しい術を試されたみたいでそれも失敗だったみたいで…一ヶ月は元に戻れないんだよね」
それを言えばそうかとまた不機嫌そうに小十郎は頷いた。
何で不機嫌になるんだ…キリリと佐助の胃が痛くなってきた。
「んで…あの聞きたいんだけど…一ヶ月の俺様を補給ってどういう事っすか?」
「あっ?その言葉通りだが」
「いや…補給って何を補給…っわ」
捕まれていた腕をひかれればぎゅうと小十郎の腕の中におさまった。
へ?と佐助は目を丸くする。
「俺はなぁ…猿飛…お前を好いていてな」
「はあ」
「お前にこうして触れたくてな」
「え…」
「離したくない」
「えっあ…」
「がそれも叶わないし俺は口下手だからなかなかお前に話しかける事も出来ない…だからこういうことも言えなくてな」
いや言わなくて結構です…ってかこの人は本物???
なんて失礼な事を考えていればやけにまた吐息がかかるなとあげた顔に唇が落ちて来る。
ぎゃあと逃げ出そうともがく佐助を押さえ込み、小十郎は逃がさねえよとそう言った。
「一ヶ月ありゃあ大丈夫か」
何が?!!
いやに楽しそうな声の小十郎が言えばなんだか嫌な予感しかしない。
それから猛烈アタックをするようになった小十郎から逃げる佐助の姿が見られるようになったとか…。