バサラ小説

□余計に苦労が増えました
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案の定、その日の昼には到着した政宗と幸村は早くも手合わせを始めて今はのんびりと縁側で過ごしていた。
その近くでは小十郎が何を話すでもなくただ二人の会話を聞きながら動かずに座していた。

「Hey!!!小十郎どうしたよ?あの忍がいなくて寂しいのか?」
「そんな事はありません」
「すまぬでござる…」
「幸村が謝る事じゃねぇだろ?仕方ないあいつは忍なんだからよ」

そんな三人の傍にお茶と茶菓子を乗っけたお盆を勘九郎に扮した佐助が置いた。

「どうも…っと勘九郎ではないか…」
「はい…今回は長くなりそうでここを離れていては何かと心配だと私を置いていきました…ご主人には劣ると思いますが…幸村様、一ヶ月程私で我慢してくださるとありがたいです」
「いやいや、某は構わんぞ!!お前もどうだ?一緒にお茶でも」
「いえ…私は戻ります…では」

幸村には勘九郎がまさか佐助だとわかってはいない。
幸村の事だ…はずみでポロリとばらされてしまうかもしれないと考慮して教えなかったのだ。
政宗や小十郎にも一応挨拶をし、ばれていない事がわかると佐助はホッと静かに息を吐いて背を向けた。

「おい」
「はい?」

才蔵のとは違う力強い低い声で呼ばれ思わず肩が跳ねそうになったが佐助はなんですか?と不自然にならないように振り返った。

「少し聞きたい事がある…真田、こいつ借りていいか?」
「え…か、構いませぬが」
「来い」
「えっ、えっ?」

立ち上がり歩き出した小十郎に佐助は戸惑ったが断る理由も特にはなかったので後について行った。
屋敷を出て少し歩いてから何を思ったか道をそれ草木の覆い繁ったそこを歩き出す小十郎にあのと声をかけるが返事はまったく返って来なかった。

(はあ…苦手だわやっぱりこの人は)

そう思っていればくるりと目の前を歩いていた小十郎が振り返った。

「お前に聞きたい事がある」
「…はあ、なんでしょう?」
「あいつに好いているやつはいんのか?」
「へ?」
「だから好いているやつはいんのかって聞いてンだよ」
「えーと…あいつってお…ご主人の事ですか?」
「あぁ」

えええ…いきなりなんだよと佐助はひきつる頬をなんとか押さえ込み首を傾げた。

「さぁ?わかりません」
「…ならもう一つの質問だ…お前は佐助に似ているが…隠し子じゃあねえよな?」
「まさかっ!!!お…僕は烏ですよ」

隠し子ってええええ…佐助の頭の中は早くも混乱していたが何とか笑顔で答えた。

「ならいい…最後に聞くが…なんでんな姿してんだ?猿飛」
「は?!」

ななな何で?!

「気配がそうだろうが」
「いっいや僕…ご主人じゃ」

ジリジリと後ずさろうとすればガシリと腕を捉えられた。

「何故逃げようとすんだ?ん?」
「だっ…だって…なんか恐いですもん!!それに僕は烏ですっお願いですから離して下さいっ!!!」

笑顔がっ!!!笑顔がめっちゃ恐いんですがぁ!!!

ひいぃっ!!!と声をあげて腕を振り払おうとするが、今の腕力ではそれを出来るはずもなく…。
 
 
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