バサラ小説
□願わくば
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「泣くな」
「うっ…無理ぃ…」
今までこんなに大切にされた事なんかなかった。
幸村達といた時の幸せよりもすごく心が満たされる幸せに、佐助は心の中ですごく嬉しいと叫んだ。
しかし素直じゃない佐助はそれをなかなか言葉に出来ない…けれど体はギュウと小十郎を求めた。
「…小十郎さんっ…」
佐助が強く抱きつけば小十郎は驚いた顔をしたあとにフッと彼にしては珍しく柔らかい笑みを浮かべた。
「可愛いなお前」
背中を撫でられ佐助は小十郎の肩に顔を埋めながら、小十郎をいっぱい感じていた。
匂いを体温を低く笑う声を優しく撫でる手を…それら全てを感じて佐助は沸き上がる想いにまかせて言った。
「…大好きっ…」
ぐぐもった声ではあったけれど、小十郎の耳に確かに届いたその言葉に満足そうに笑いながら俺もだと返す声は何処か弾んでいて…。
こんなに愛しいと、離したくないと、初めて思った茜色の髪を持つ佐助を小十郎はこれからも大切にしていきたいと思いそしてこれからも共にいたいと強く願った。
肩を埋めていた佐助の顎をクイと掴み深く口付ければ、わずかにあがる甘い声にさえ溺れていくのを感じる小十郎はお願いだから消えるなよと佐助の耳元でそう泣きそうに呟いた。