バサラ小説
□余計に苦労が増えました
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「…ん?」
朝起きて…違和感に気がついたのはすぐだった。
周りの景色が妙に高く感じたのだ。
(おかしい…何で障子戸がこんなにでかいんだろう)
おかしいなおかしいなと口の中で呟く佐助がうんうん唸っていると、ドドドと騒がしい音を立てながら主である幸村が廊下を走ってきた。
多分鍛練でもしに行くのだろう…毎日律儀にこなしているから。
「お早う佐助」
「あぁ旦那お早う…朝からうるさいね相変わらず」
そう短い挨拶を交わして通り過ぎようとした幸村もその異変に気がつき…キキーと止まって振り返り唖然とした表情を作ってみせた。
「どう…したのだ?佐助…」
そう声をかけられ振り返った佐助は首を傾げた。
「…あれ?旦那…急に背が伸びた?」
「いや…某が伸びたわけではないぞ…佐助…お前…何故縮んでおるのだ?」
「はい?!」
あらためて言われて気がついた。
そうか…周りが妙に大きく感じたのは自分が縮んだからか…って…
「なんで俺様小さくなってんの?!」
思わず佐助は叫んでいた。
いや叫ばずにはいられないだろう…小さくなったのだから。
「というより子供になったな」
お前の烏が変化した時の姿にそっくりだ…楽しそうにそう言った幸村に佐助はそんな暢気な事を言っている場合じゃないと言ってから何故こんな事になってんだよと頭を抱えた。
そこでおりてくる静かだが耳に届く低めの声。
「すまん俺だ」
「才蔵ぉおお!!!」
ふざけんなぁっ!!とクナイを投げられても平然と全て弾き返して、表情をあまり動かさない佐助の仕事仲間である才蔵は、しれっとしたままふざけてはいないとそう静かに言った。
「新しい術を試しただけだ」
「俺様で試すなよっ!!!」
「どうやら俺の術は失敗したらしい」
「失敗したのかよ?!」
「成功していれば今頃は…くくっ」
言葉を区切ってから静かに笑い出した男に佐助は殺す気でクナイを何本もうちこんだ。
「まあまあ良いではないか佐助…愛らしくなったぞ」
「旦那…それ何の慰めにもなってないよ」
はぁ…最悪だ…と呟く佐助に追い討ちをかけるように才蔵は、
「ついでにその術がとけるのは一ヶ月後だ」
とそう言ってまた静かに笑いながらシュンッと消えた。