バサラ小説

□結局は彼に甘い自分
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俺の烏は人に化けれる。
顔は自分にそっくりだがその姿は子供で、黒髪。
愛らしい目はくりくりとしていて俺はそれを見る度に己の主が幼い頃をよく思い出していた。

「ご主人」

そう言いながら自分をしたってくれる烏に勘九郎と名をつけて可愛がってやるが歳を聞けば遥か自分の上をゆくという。
子供の姿だが人間に化けれる獣はそうそういないらしく、かすがの梟も実は化けれるらしいがその姿を見たことがない。

「おい…猿飛」

そう言いながら声をかけてきたのは、化けている烏にももう慣れている左の頬に傷がある男…片倉小十郎で何かと自分にかまってくるので困っていた。
今も勘九郎の頭をぐりぐり撫でまわしながら団子食いに行かねえかと誘ってくる。

「ちょっとすみません…子供じゃないんで撫でないでいただきたいです」
「ガキじゃねえか」
「見た目で判断しないでください」

勘九郎の方はどうやら小十郎の事を煩わしく思っているらしくうんざりとした視線をおくっているが、小十郎のほうといえばまるで我が子を見るような暖かい目で勘九郎を見ていた。
多分きっと、自分と小十郎の子供だと思いながら接しているに違いない…。

「団子?甘いもの苦手だからいいや」
「こないだはわらび餅食ってたじゃねぇか」
「…」

確かその時は己の主である真田幸村と二人だけで甘味屋に行った筈だが…何故知っているのか…正直想像するのも恐ろしくてヒクリと頬をひきつらせる。

「…ご主人…大丈夫ですか?」

長い間共にいた烏には自分の心情がわかるらしい。
心配そうな視線を向けられて大丈夫じゃないと脱力する。
 
 
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