バサラ小説

□願わくば
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「あの…」
「なんだ」
「ひじょーに恥ずかしいんで…離れてくれませんかね」
「…」
「ぎゃあっ!!!痛い痛い!!!苦しい!!!」
「うるせぇ」

最近やっと二人の想いが通じた。
恥ずかしがって認めたくなかった佐助ではあったものの、今ではこうして強く自分を抱き締める強面の彼…小十郎が好きなのだなと感じていた。
小十郎の部屋に来るたびに抱き締められ密かに嬉しく思うがしかしなかなか素直じゃないため嬉しいだとかそういう気持ちを佐助は真っ向から言ったことがなかった。

「また…怪我したそうだな」
「えっ?あぁ…いやそんなのいつもの事だし」
「血の匂いが濃い…深いな…腹からか?」
「いだだだだ!!!ちょっ触るなよっ!!!」

涙目で小十郎を睨みあげ、ったく真田の旦那はいつも余計なことを…とブツブツと視線を落として言う。
ある一言にピクリと眉を動かし小十郎は傷があるであろう佐助のお腹を親指でグリグリと強く押した。

「余計なことだと?」
「いたっ…痛いって!!いっ…あだだだ!!親指やめろ親指!!!」

顔を歪める佐助に構わず小十郎は佐助の耳元に自分の唇を寄せた。

「…真田からお前の事を聞き出してるのは俺だ」

低い声が佐助の鼓膜を震わす。
未だにそこまで近くに小十郎の声を聞いた事がない佐助はビクリと肩を震わせた。

「何のためにさ…」
「お前が浮気したらすぐに仕置きするために決まってるだろう」

あまりの極悪な笑みとその言葉に固まってしまった佐助の唇に自分のそれを軽く合わせてから小十郎は冗談だと笑った。

「あんたが言うと洒落にならないよ…」

ヒクリと頬をひきつらせ自分は何故こんなやつを好きになってしまったんだと佐助は後悔しはじめてきた。
しかしすぐに真剣な声色に変わった小十郎の声に耳を傾ける。
 
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