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□愛と嘘女と肉の沼 婚約指輪
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麗かな日差しの下、突然差し出された白百合の花束に小さな宝石箱。
胎教として流れるカノン。
久し振りに見る穏やかな笑顔に、僕はただ見惚れる事しか出来なかった。


「…………風間さん、これ」


もしかして。
声は掠れて、最後まで口に出す事は無かったけど、風間さんには伝わったようだ。
にこりと微笑みを返してくれただけで返事としては充分だった。


震える指先でそっと蓋を開ければ、白銀のリングが出番をまだかまだかと心待ちにしている。
ダイヤモンドを上品にあしらった小さな輪を摘み、主にかしずく騎士のように僕の手の甲にキスを一つ。
それから、薬指にゆっくりと誓いを填めて。
ああ、ああ、やっと!


「好きなんだ修一。結婚してくれないか」


ずっと待ち続けた言葉。ぽろぽろと涙が頬を伝って流れて行く。
感極まって泣き出す僕を抱き締めて、風間さんは笑った。


「随分と待たせてしまったね。ごめんよ。怒ってる?」


怒るだなんて。
これは歓喜の涙なんですと言いたいのに、喉は嗚咽を堪えるばかりで意味を為さない。
でも、きっと理解してくれてる筈だ。
だって風間さん、今まで見た中でも一番幸せそうに笑ってるんだから。


「愛してるよ、修一」


ぼくも、あいしてます。
微笑みあって、震える唇に誓いのキスを。
左の薬指に填まった指輪が木漏れ日を浴びてキラリと輝いた。





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