シリーズ

□仮面が効かない
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あたしは、可愛い。
自分で言うのもナンだけど、周りからもチヤホヤされてきたし、あたしの仮面が通用しない男なんていない、筈なの…





筈だったの。







「舞さんっ」



「ん?あーっ、太郎くん!何してるのぉ?」

隣のクラスの太郎くん。この時代に"太郎"はどうかと思うけど…。でも、お父さんがフランス人とかで帰国子女の金髪サラサラハーフらしい。


一応、甘い声で応答。


「この間言っていたCD、持ってきました!」



この間…?っていつだったっけ、とか思いながらも笑顔は絶やさずに、ありがとぉ、と返す。



太郎くん、顔が赤い。あたしの笑顔にヤられちゃったのかしら?
こういう時は、サッと引いておくのがいいのよねー。


「じゃあ、次移動だから、またね!CDほんっとありがと」




マニュアル通りに接客するのは疲れる。頬の筋肉も吊りそうになるし。
踵を返して顔を緩めると、目の前の優斗に衝突しそうになった。
(あたしはぶつかっておきたかったんだけど、優斗が華麗に避けやがった)



「あ…優斗!どぉしたの?」



スマイルを取り繕いながら、優斗の目を見る。すると、その目が蔑むようにあたしを見た。




「お前…何?その作り笑い。気持ち悪い」




それだけ言い残して去っていく。気持ち悪い、なんて言われたことないのに、ムカつく筈なのに、昔から優斗なら許せてしまう(むしろ快感?)。

その反面で、あたし何してるんだろうという、虚無感が突き付けられる。



優斗には、仮面が効かない。









(Mなのかもしれない。)





***
バカな子ほど可愛いとか…
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