dreamin'

鐘の音は、
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気付きたくなかった、あの秋の終わり












「徹、今日も補習ー?」

「うあ、忘れてたのに…。舞ちゃーん、残っててくれるの?」
「え?優斗とデートだよ」

「えええ!?な、優斗、と?」

「何それ、初めて聞いた」

「きゃはは、冗談ですけど」

「あ、焦ったじゃん!」



幼なじみで三人
学校でも、そこそこ有名。美男美女、らしいよ





俺は、舞ちゃんをずっと好きだった、今もそう。


でも、結果のわかりきった不毛な告白をするほど俺は馬鹿じゃない。つもり、だ。


そして、臆病だと気付いても、"幼なじみ"をキープする。安全圏であり続けるんだ、








「うはー、やっと終わった!」

舞ちゃんと優斗は、数分前に出発してしまった。走れば追い付ける、かな。
二人だけで居させるのも、何だか癪に障るし、頑張ってやるか。








いつもの家路。小・中・高と一緒に歩いてきた(たまに優斗は抜けたりしたけど)。
夕日の見える、河原道。







「あ、」


やっと目の前に見える二人の後ろ姿。


「優斗ぉ!舞ちゃ…」




叫んだ先の、夕日の逆光を浴びた二人は、嫌に綺麗で

鈍感な俺のカンを働かせる





優斗の一歩後ろを歩く舞ちゃんが もどかしそうに、優斗の手を掴もうとした、けれど
躊躇いながら、少し寂しそうにその手を戻した。



(ああ、舞ちゃんって、そうだったんだ、ね。)



夕焼けの所為かもしれないけど、赤く染まる頬と耳が綺麗だと思った(こんなときなのに、俺って)。





近くの小学校のチャイムが、鳴る。いつも聴いていた音に、いつもと違う何かを感じる。









(僕はどうしたらいいんだろう)



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