ふたつのスピカ
□世界の…‥
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放課後の音楽室。
ピアノを弾くあいつを横目に、図書館から借りた本を読んでた。
やさしい音に包まれる
わたしの好きな時間。
世界の…‥
ふと、ページを捲る手を止めて。
あいつの指先を盗み見た。
男にしては白い、指先。
魔法みたいに音を紡いで。
何故か、ドキドキした。
それを誤魔化すかのように声を出す。
「シュ、シュウ」
思わず声が上ずる。
「何?」
演奏する手を止め、
わたしを見る。
ほんの少し笑いを含んだ声で、わたしに問い返す。
「変なこと…聴いてもい?」
目を見て、話す。
それだけなのに、
鼓動がうるさい。
「答えられる範囲なら。」
笑った顔。
いつも感じる距離が
今は縮んでる気がする。