07/23の日記

23:23
「蒼に向かって跳べ!2」
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「で、何か用なの?」


後退るのは止めてくれたものの俺と副会長の間には相変わらず距離がある。この2mが憎い。


「平井君、僕の話聞いてる?」

「直行って呼んでくれてもいーんですよ」

寧ろ呼んで。是非呼んで。副会長のその涼やかな声で「直行」って、


「平井君」

無視かこのヤロー



「副会長こそ何か用があるんじゃないんですか?今まだ授業中でしょう」

基本的には真面目な筈のこの人が授業をさぼって屋上に来るなんて珍しい。


「生徒会役員の特権で出席してなくても単位には問題ないよ」

「それは生徒会関係の仕事をしている場合の話ですよね」

だが、しかし今彼の手元にはプリントも資料もない。そもそも屋上に来る必要性がないのだ。さてさてこれはどーしたことだろーね?

まぁ、原因は解りきっているけど。



「まーた猿が生徒会室入り浸ってんですか?」

「・・・・・」

帰ってこない返事は肯定の証。それにしてもあの猿もよくやる。会長にも副会長にも好かれてない癖に彼処まで自信過剰でまとわりつけるのって一種の才能だと思うね。何度会長に「部外者は立ち入り禁止だ」と部屋から摘み出されても懲りないあのしつこさには納豆もびっくりだ。

あまりのしつこさに仕事が進まないからと放置状態にされてるのを許可が下りたと思ってそうだし。いや、元々「同じ生徒なのに許可がいるのはおかしい!」って喚きたててたぐらいだから思ってないか。

うーん、難しい。


「あんなのに限って理事長の甥ー、とか言うんだから世の中間違ってる」


「平井は彼のこと好きじゃないの?」


「好きではないですね。なんせ副会長のこと悪く言った奴ですし」


何が偽物の表情が気持ち悪い、だ。
社交辞令を何だと思ってんだ。16年間も生きてきて初対面の人相手に心から満面の笑みで挨拶できる人間しか見たことないのか。

「ふくかいちょー、俺はね副会長の笑った顔好きですよ。例え愛想笑いでもね。」


きれーですし、と副会長に近づきながら笑ってみる。副会長は咄嗟に動けず立ち尽くした継だ。視線は俺の顔を釘付け。まるで追い詰められた獲物だ。そのまま副会長の腕を掴むと、びくりと身を竦めた。

なんて素直な反応。可愛くって堪らない。


「勿論、ツンと澄ました顔だって可愛いですし、不機嫌そうな顔だって好きです。副会長が俺に向けてくれる顔なら何れも好き」

全部ぜーんぶ、好き。
だからね、もっと俺に甘えてくれても我が儘言ってもいいんですよ。


「ね、もっと副会長の色んな顔見して下さい」

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