05/28の日記
23:03
7日間だけの幻(こねた)
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瞼の裏で春が芽吹く。
萌黄色と薄桃の峡でーーが軋む。
「退屈?」
俺の隣に座って明日提出だという書類を読み耽っていた春日さんが、尋ねる。
時間という理を急に目の前に突き付けられたようで、はっ、と我に返らされた気分だ。
「ん、・・・そんなことないよ。楽しい」
「そう?」
なら良かった、と笑う顔も綺麗だ。
だけど、何かが違う。
(さっきの方が似てた)
長い睫を伏せ、時折書類にシャーペンを走らせる無防備な姿が。
春の空の下で目を瞑った、視界の色によく似ていたのだ。
「もう少しで終ると思うから」
春日さんはそう言うと、また視線を下に落とした。
(あ、)
(ほら、やっぱり)
暖かくて、優しくて、切なくて。
瞼の裏がひりひりと痛くなる春の幻影によく似ている
『瞼の裏の幻』
ほどけてしまう、
―――――――
今さら春ネタですみません。
春ってすぐ終わりませんか?感覚的に。
そして個人的に春の印象は「夢現」と「別れ」です。後者は主に「優しい母親」との別離ですね。実際にすれ、憧れにすれ。
このネタは前者です。
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