04/16の日記

23:25
『夕方4時からの2時間と30分』
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僕らは会話することができた。
口を通じて、空気を震わせて、話すことはなかったけれど。
確かに会話なのだ。



(風が冷たいね)

(ね)


車椅子を寄せて、僕はベンチに座り込む。
冷たい。

季節は春で気温も1ヶ月前と比べると随分高くなったとはいえ、夕刻が近付く頃はまだ冷え込む。

隣のケイは寒くないだろか。


男にしては長めの髪先が風に揺れるのが痛々しくて、御座なりに膝に掛けられていただけのブランケットを引き上る。
水色のパジャマに包まれた彼の肩を覆うと彼は僕のパジャマの首元に触れた。


(ボタン、)

(ボタン?)

(しないと風邪を引くよ)

(肺炎で入院してるのに?)

風邪を拗らせて肺炎を起こしたのに、また風邪を引くのかと思うと少しおかしい。
ケイには笑い事じゃないらしく眉を潜めた。

あ、眉間に皺。


(ごめん、)

(チーはもっと、自分の体大切にしなきゃ。昨日だって熱あったでしょう)


自分は一昨日出してた癖に、と思うと共に伝えちゃったみたいだ。
また、皺。


(ごめん、今のなし!)

(・・・・・・)

(ちゃんと気をつけるから、ね?)


両手を合わせ拝むふりをするとケイは仕方無いとばかりに笑った。



(あ、あの花可愛い)

(え、どれ?)


僕の視線の後を追って、ケイの視線が移動する。

(ほんとだ、可愛、ー)


綻ぶ口の端に掠めるように自分の唇を押し当てる。
驚くケイの横で僕は薄紅いの花弁の様に澄ました顔で指を絡ませた。









『花びらの、逃避行。』
暗くなるまで側にいて、

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