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□メロディライン
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「冬休みよかったら俺の家遊びに来いよ」
「あぁ、うん行きたい。泊まりOK?」
ガタガタと揺れる列車に俺は揺られている。 一緒に乗っているのは暦と葎。基は明日帰るらしい。
「おー、家広くなったしお前らならお袋も喜ぶだろうしな」
面食いなんだ、あの人。綺麗も可愛いも格好良いのも大好き。
そのわりにウチの親父は整った顔をしている訳じゃないので何で結婚したのかが謎だ。
まさか金持ってるからってのが理由じゃないと思うけど・・・。
あ、お袋の実家も金持ちらしいから政略結婚って理由も有りか。
「じゃあ遠慮なく遊びに行っちゃおー!」
「・・・まぁ、その時は手土産でも持って行ってあげるよ」
「そりゃどうも」
葎と暦が選ぶ手土産はどうせ甘い物ばかりなのだろう。甘い物好きな妹が喜ぶ。
電車の中はもうすぐ正月を迎えるこの時期にしては珍しくがら空きだ。
まだ時間が早いせいかもしれないけど俺達以外にはサラリーマンの男性と同じ学園の生徒らしき姿がちらほら見えるぐらいだ。
「人、少ねぇな」
「山奥から出てる電車だしね。ウチの学園の生徒達は車で帰る人ばっかりだから尚更でしょ」
「あー、正門も裏門もお待ちの車多かったもんな」
運転手つきのベンツやロールスなんかががじゃらじゃら。
電車で帰る奴なんてほんの一握りだと思う。
暦達が車組なら俺は今頃一人寂しく電車に揺られていたことだろう。
暦と葎も車組だろうと思っていた俺には嬉しい誤算だ。
時間がたつにつれ電車内の人の数は増えていく。
駅のホームに下げられた看板に見馴れた地名を見つけた。
俺が下車する駅だ。
「俺此処で降りるから」
「おー、また来年ー!」
「良いお年を」
「お前らもな」
まだ目的の駅につかない暦達に手を振って別れた。