Poke

□笑顔で喧嘩に終止符を
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イライライライラ


「…………」


イライライライライライラ


「…………っ」


イライライライライライライライラ


「…………あ゙―っ何だってんだよ本当にっ!!」



彼、ジュンは街角で一人、物凄く苛立っていた。
他から見ればおかしな行動をとっている不信者にしか見えない。

だがジュンは他人の目など気もくれずブツブツと何かを呟きながら小刻みに足を揺らしていた。


「おーいジュンー!!」


不意に聞こえたジュンの名を叫ぶサトシの声。
完全に自分の世界に入り込んでいたジュンはサトシの声に気付き顔を上げる。


「サトシ!遅い!」

「えー?時間ピッタリだろ?」

「35秒遅刻だ!!」

「ジュン細かい!」


等と出会い頭に喧嘩になりそうな雰囲気に周りの人がクスクスと笑っている。
笑い声が聞こえてくりのと二人の顔が赤くなるのはほぼ同時だった。

「とりあえず、どっかい行こうぜ」

「ジュンは行きたい所あるのか?」

「ない」


ジュンから誘っておいて、その計画性のなさといい、自分勝手過ぎるのは如何なものか。と怒りが沸いてくる。
しょうがない、とため息を一つ吐きなんとか怒りを宥めてジュンの腕を引っ張りズンズンと進んでいく。


勿論、あてなどないが。


腕を引っ張られているジュンが後ろで抗議の声を上げているが、そんなものは完全無視で黙って近くの公園まで引っ張っていった。




***




公園まで一言の会話もなく連れて来られたはいいが、今からの予定などないのだから途方に暮れる。

二人は深い長いため息を吐いた後どっとベンチに座り込んだ。

しかしここでも会話が生まれる訳もなく互いに黙ったまま。
そんな気まずい空気が漂った中、不意にジュンのモンスターボールがガタガタと暴れだす。

何事かと目をやれば何時もは大人しいエンペルトがじたばたと何かもの言いたげに動いていた。


(エンペルト……?)


最初は何かあったのかと首を傾げていたが、自分とサトシを交互に見る仕草に「あぁ、」と納得がいく。

エンペルトは“せっかく好きなサトシをデートに誘ったのだから気まずい空気を作るな”と言いたかったのだ。

そうだ、せっかくいつもサトシの肩にいるピカチュウも居らず二人きりなのだ。
ここで行動せねば男が廃る!
だったら今すぐ行動っ!!


「ジュン!」


一人勝手に燃えていた所にタイミングが良いのか悪いのかサトシの一言に、ピタッとジュンの動きがとまり、顔だけサトシの方に向ける。

多少びっくりしたのかポカーンとした表情。


「えと、今日は……誘ってくれてありがとな!」


若干頬を赤く染めて照れたように笑うサトシにジュンも次第に顔が熱くなる。

むしろお前が誘ってるのかと叫びたい程に、胸が破裂しそうな位ドキドキが止まらない。


「あ、あのさ、今日はもう……」


『今日はもう帰ろうか?』と全ての言葉を言い切る前に衝動的にサトシに抱きついた。
強引で一方的なスキンシップにサトシは混乱して「え、や、あ、のっ///!!?」と、区切れてよくわからない言葉しか出せない。

それが可愛くて腕に力をいれ、サトシを押し潰す勢いで抱き締める。
その途中痛い!というサトシの叫びにも似た声が聞こえ、腕を放した。


「ジュン痛いだろ!!」

「うるさい!俺が抱き付いたのはサトシが悪いんだからな!!」

「はぁ?何で俺のせいなんだよ!!」

「うるさい!とにかく罰金だ!」


どうやら二人が喧嘩しないようにするのは不可能に近いらしい。
どうしても口調が喧嘩腰になって反発しあってしまう。


「あ゙―――くそッ!!サトシといると胸がドキドキするし…すっげーイライラするんだよ!!」


したくないのに喧嘩をしてしまう、頭では駄目だとわかっているのにいざサトシの前に立つと自分自身の感情の制御ができなくなり、ジュンも訳が分からなくなって咄嗟に出てしまった言葉に口を押さえた。


「なっ……何だよ…、俺が、嫌いなら………」


ジュンの言葉に目を見開いてそのまま俯いて震える声を絞りだしている。


「ッ………嫌いなら嫌いって、言えばいいだろぉっッ!!!?」


最後はヤケになり顔をバッと上げ、半ば叫ぶように言葉を吐く。
目には大粒の涙を溜まっていた。

流石のジュンもサトシの涙に動揺して、しまった、とでも言うように息を詰まらせ唇を噛む。
しかし最早時既に遅し。サトシはそのまま俯いて肩を震わせ嗚咽を漏らしながら泣いている。

そんなサトシに、何だが自分まで泣きたくなる始末。




……一向に泣き止まないサトシを何とか慰めようと恐る恐る抱き締める。


先程の強引の抱擁ではなく、優しく肩を抱き締めた。

暫くすればサトシの震えが止まり、あまつさえジュンの背中に腕を回す。

そして不意に聞こえたジュンの「ごめんな」という小さい声。
それに呼応するようにサトシの「ごめん」の声。


二人は同時に笑い合い、互いに「いいよ」の言葉で喧嘩を締めくくった。

















笑顔で喧嘩に終止符を。















END

初ジュンサト―☆
い、意外に難しい……!!

 

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