Everything in its right place

□8 Undisclosed Desires@MUSE
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ジョータ君とジョージ君に呼ばれて訪れた竹青荘。今日は東体大のハイジさんの従妹さんが来るらしい。
・・・どんな人なんだろう?合宿でもハイジさんやカケル君と話してるのを遠巻きに見てただけだったしなあ。・・・悪い人とは思わないけど、ちょっと気になるな。
初めて見かけたのは、走ってる姿だったから、よく覚えてる。あんなに綺麗に走る人、カケル君以外にもいたんだなあって思ったから。
すごく速かったし、ジョージ君のカケル君とハイジさんくらいしか勝てないっていうのもなんだか納得しちゃった。・・・私も、仲良くなれるかな?いろんなこと、話してみたい。

「こんばんはー」

「お、来たな。・・・久しぶり、琴葉。2階に皆いるよ」

「久しぶり。・・・今日はお土産持ってきたから」

私は飲めないけどね、と付け足したこの人が刹那さん。手に持っているのは、日本酒のビン。皆笑顔で御礼を言ってる。
なんだか微笑ましくって笑いながら見ていたら、刹那さんと目が合ったからびっくりした。・・・私のこと、覚えてくれてるかな?

「・・・あ、合宿の時にいた」

「勝田葉菜子です。一応、マネージャーさせてもらってます」

「そうなんだ。・・・私は刹那琴葉。ハイジの従妹なんだ。よろしくね」

にこりと笑って手を差し伸べる刹那さん。・・・近づいて分かったけど、背がすごく高い。ふわふわの白いショールと色素の薄い髪が丁度私の目の高さくらいにある。
なんだかすごく緊張しちゃって、ドキドキしながら手を重ねる。怖い人じゃないみたいで、良かった。この人となら、仲良くなれそうな気がするな。

「私こそ、よろしくお願いします。まだ陸上の事とかあんまりわかんないんですけど・・・」

「へえ、そうなんだ。・・・なんでマネージャーに?」

「偶々なんですけど、皆が走ってる所見て、私もお手伝いできたらいいなって思ったんです」

「ふぅん。・・・良かったね、ハイジ。こーんな可愛いマネージャーがいて。・・・うちは松っつんだからなあ。もうあれはマネージャーっつーかお母さんだ」

「か、可愛いだなんて!」

目を細めてハイジさんに笑いかける刹那さん。・・・可愛いだなんてそんな、なんだか照れくさいなあ。

「マネージャーって・・・榊の教育係みたいな人っスよね?」

「うん、そう。・・・ていうか、私1月に浩介が来てから松っつんに叱られてない日が思い出せない」

「そ、そんなにしょっちゅうなんスか!?」

「智己ちゃんにもいじめ・・・いじられてるし、浩介の表情筋は随分鍛えられてるんじゃない?」

「いや、それなんか違うと思います!」

「・・・ふふっ」

カケル君と刹那さんのやりとりがなんだか面白くて、つい笑っちゃった。カケル君とも、知り合いなのかなあ。

「ハナちゃんハナちゃん、刹那さんってねえ、カケルとも同じ高校だったんだって!だから仲良いんだろうね〜」

「さっき聞いたんだけどさ、やっぱり高校時代からすごく速かったんだって」

「へー、そうなんだ!すごいね」

丁度疑問に思ったことを教えてくれたのは、ジョージ君。ジョータ君が続けて言った言葉はやっぱりなんだか納得できて、すごいとしか言い様が無かった。


***


「刹那さんってさあ、恋人いないの?」

「せやなあ。刹那ちゃん顔はええもんなあ」

「いますけどー。ていうか何ですかその顔だけみたいな言い方」

「・・・は?」

ピシリと空気が固まって、皆が刹那さんを凝視する。・・・彼氏、いるんですか!?

「琴葉、どこの誰か教えなさい。包丁持ってちょっと粛清してくるから」

「いやいやいや、それもう犯罪でしょうが」

今すぐにでも、って感じで立ち上がったハイジさんを、刹那さんが腕を掴んで止める。・・・本気、なのかなあ。ハイジさんって時々お母さんみたいではあると思うけど・・・。
でも、包丁持って粛清って・・・。ハイジさん、正直言ってちょっと怖いです。刹那さんの彼氏さん、平気だといいなあ・・・。

「昔からハイジはそうだよね。彼氏できると大体反対する。・・・何人それで逃げて行ったと思ってんの」

「相手が意気地無しなだけだろ?オレのせいじゃない」

「うわぁ、すごい笑顔でそれ言うの、ハイジ?」

な、なんだかこの2人の周りだけ空気がどす黒い気がするような・・・。この2人も、まだ良く分からないけど似たもの同士、なんじゃないかなあ。

「・・・ハイジ」

「んー?」

「今回は、結構私も本気だから」

にっと笑った刹那さんの笑顔は少し恐い位に綺麗だった。・・・たぶん、見とれちゃったのは私だけじゃないと思うの。
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