Everything in its right place
□2 Airbag@Radiohead
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「今日は足痛めてたんだな」
「そうでもない・・・っていうのは嘘だけど」
キラリと殺気を放つ視線は、東体大のマネージャーらしき男の物だ。・・・無茶してるって事か。
琴葉はオレの従兄妹で、早くに両親を事故で亡くした彼女をオレの親は育てていた。付き合いはもう随分長くなるけど、昔から1つ下の彼女は無茶する子だった。
本音は全然教えてくれないし、ちょっと嫌な事があっても我慢してそのまま乗り越えてしまう。最初はそれが分からなかったけど、やっぱり彼女なりの遠慮があったんだろう。
それは、普通に会話している言葉の端にも時々見られた。
「ハイジ、今は走っていて楽しい?」
「・・・“ヤクソク”を破ったのは悪いと思ってる。・・・でも、オレはキッカケを見つけたから」
「・・・蔵原走。彼は高校時代の後輩だったから少し知ってるけど、随分雰囲気が変わったみたい」
小さく笑う琴葉。そういえばカケルが少し彼女を気にしていたっけ。従兄妹だと言ったら驚くだろうなあ。
「もうオレは琴葉だけに“ヤクソク”を押し付けるのはやめにしたい。・・・オレの分も親父の分も、もうオレが背負っていけるから」
「・・・そしたら私は何のために走ればいいの?」
唐突な、質問だった。もう大丈夫だって、彼女を安心させたい一心でこの言葉をつむぎだしたのに、それは君にとってはつらいものだった?
オレのせいで走り出して、自分で道を選んで走りつづけたんだろ?・・・オレの存在なんて、重荷になってるだけかと思っていた。
「でも、こうしてまた走れてるんだし、オレばかり琴葉に理由を押し付けたくないんだ」
「・・・じゃあ、半分こする?」
「はんぶん?」
「一人だけで背負うにはちょっと重過ぎるから、チェーンソーかなんか持ってきてド真ん中で切って、半分にするんだよ」
「チェーンソーって・・・それでいいのか?3年も一人で背負わせてきたんだから、オレ一人でも・・・」
「もうすっかり良くなったみたいには見えないけど?」
鋭い視線。それは確かに正しくて、昔からオレは彼女のこの視線に会うと、たじろぐことしかできなかった。・・・もう大丈夫かと思ったんだけどなあ。
「じゃあ、琴葉が走り出す理由を見つけるまでは半分な。・・・その頃には、もっと小さくなってるよ」
「・・・かな」
二人で笑いあって、それが解散の合図。それぞれのチームメイトの所へ駆けていく時には、互いに少しだけ気持ちが軽くなっていた。
ありがとうとか、ごめんとか、もっとたくさん言いたいことはあったのに、すっかり忘れてしまった。・・・今度アオタケに呼んでみようかなあ。
オレの料理は昔から美味しいと言って食べてくれてたし、それくらいのごめんねは許されるだろう。
・・・ああ、カケルにも教えてあげなくっちゃ。いずれアオタケにくることになったら喜ぶだろうから。
反対しそうなやつもいるけど、まあそれは強権発動ってことで。・・・オレの、大切な従兄妹だからな!
♪I am born again...
あとがき
さて、今回はOK Computerの1曲目であるAirbagがタイトルです。
ハイジが生まれ変わったみたいな感じで選曲しました。うちの子は明るいようで影があるので時々口調がおかしくなりますが、わざとなので悪しからず。
普段は茶化すみたいな事しか言わないんですけど、真面目な時は男口調というか、説明文みたいな口調になります。
1で誰かと似てると書きましたが、ハイジだったんです、血が繋がってる従兄妹ですしね。
過去話も書きたいですね、いつか。パ・・・藤岡も出してみたいです。
Airbagの次は、もちろんあの曲ですね!これでもう分かる人は雰囲気も分かっちゃうかもしれません。
19:42 2009/11/25
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