晴嵐-seiran-

□B 焦がれられる
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「神童さんのお手製のTシャツ、走にもあげますね。そして走、あれを見てください。」

ムサの示す方向には、自転車をこぐ同年代くらいの見知らぬ女の子と、なぜか琴葉が併走していた。



B 焦がれられる



「御姉様陸上やってたんですか?私なんて自転車乗ってるのにもう疲れてきちゃった」

御姉様って何だ御姉様って・・・。私に話しかけてきているのは、八百勝の所の葉菜子。
私ははーちゃんとよばせてもらっている。彼女とは以前から知り合いで、野菜を買うときにあって以来一応友人だと思う。

何故私がこんなところで走っているかというと、以前ハイジから面白い、と言われたのもあって商店街をうろうろしていたら彼女に捕まったからだ。
これから暇ですかじゃあ私と一緒にきてくれませんか最近商店街を走ってる人がいるんですよと早口で捲くし立てられ、結局付いてくることになった。
自転車を貸そうか、と行ってくれたが、どうせ走っているのはハイジたちだろうし、そこまでペースは速くないだろうからいい、と言って現在に至る。

うれしそうにしているはーちゃんについて行き、ハイジになんでいるんだと驚かれ、スギさんにこの辺をみんなで走ってるんだ、と教えられたりしていた。
一通り聞き終えて黙々と走っていると、少し前にいるはーちゃんの目的になんとなく気づいた気がする。
近くにいたムサに聞いてみると、やっぱり彼女のお目当ては双子でしょう、と返ってくる。
どっちだろう、とも思うけどまあ他人の恋愛事情に口出しするのはやめておくか。


いつの間にか王子こと茜ちゃんとサカヨ先輩が見当たらない。後ろの方にいるんだろうな、と思ってあたりを見回すと、様子を見に行ったのかハイジもいない。
スギさん、ムサと話す雰囲気でもなかったので、スピードを上げてはーちゃんに追いつく。しばらくしたら後ろでハイジの叫ぶ声が聞こえたような気がする。


ここで冒頭に戻るわけだ。



「琴葉−!」

ああなんかハイジが呼んでる。とりあえず足を止め、後ろを振り返ってみるとなぜか御岩先輩とニコ毒先輩と走がいた。
あれ、3人共最初はいなかったような気がするのに、と思いつつハイジたちが追いつくのを待って、併走する。

「何で走たちもいるの」

「私が彼らに面白いものが見れる、と教えたんです」

「あーあれか・・・」

「琴葉さんも陸上やってるんですか?大分走れるみたいですけど」

「違うよ」

「え?違うんですか?」

「どうせ過去形だ、とか言うんだろ?」

「今はやってないから」

走の質問の間違いを正そうとすると、答えを読めたらしいハイジが割り込んでくる。
右に走がいて、左にハイジ。私らの後ろにスギさんたちがいるようだ。

「やっぱり、長距離ですか」

「うん長距離。中高で少しした程度だけど」

「高3の夏の大会で大会記録を出したやつに少しとか言われたくないな」

「へえすごいね」

話を聞いていたスギさんがまざってくる。他の面々も感心したようなツラだ(ひどい)

「人数足りないから、ってスケットで行っただけだったんだけど・・・」

「それで記録が出せるなんて、琴葉さん凄いです」

「でも大学入ってからはやってないみたいだね」

「スポーツ推薦きてたけど、面倒だったから」

「面倒、ですか」

「そ。大学入ってまで規則に縛られたくないからね」

ふう、と一つため息を付く。はーちゃんは相も変わらず目を輝かせて双子を追っている。
そう話したこともないだろうに、よく好きになれるなぁと思いつつ黙々と走った。
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