Everything in its right place

□1 Yes@Cold Play
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「逃げろ刹那!!」

何でそんなに慌ててるの、智己ちゃん。今は普通にトラック回ってるだけだし、レースでもなんでもないじゃん。
そんなことを考えていたら、いつの間にか黒い物体が飛んできていた。・・・ホーガン!?


Session 1  Yes@Cold Play


「ッ痛!」

左足のふくらはぎに砲丸が直撃した。ちょっと、なんでこんなトコで投げてんだよ。後で一発殴ってやらなきゃ。
空が、スローモーションの映像見てるみたいにゆっくり視界の大部分を占める。足に両手を添えたせいで背中から地面に倒れる。
どくんと心臓が大きく音を立てるのが聞こえて、喉が小さくかすれるみたいな呼吸音。・・・息が出来ない!
何人かの足音が遠くに聞こえて、大丈夫かと誰かが問う。・・・松っつんかなあ。

「背中からいって息できなくなったのか!?おい、アイシングと担架の用意」

担架!そんなの私いらないんだけど。ずきんと痛みを訴える左足は、やっぱり痛い。

「おい、息しろ!」

したいよ!でもできないんだってば。非難が声にならずに口だけが動いてるのが分かる。とたんに、ばしんと背中を叩かれる。
これってマンガとかで目が飛び出る感じ?ちょっとだけ分かったような気がする。

「げほっ」

「おい、意識あるか?」

「ある。・・・ただし今すごく現実逃避したいけど」

「してる場合か!!足は?」

「智己ちゃん酷い〜」

「おい琴葉」

「痛いけど歩けると思うよ」

「却下。・・・榊手伝ってくれ。古賀はコーチか監督呼んで来い」

「あいよー」

「琴葉先輩!!!」

浩介五月蠅いなあ。うろたえてるのは分かるけど、何で私のが冷静なんだろう。松っつんまで結構あせってるよねえ。

「どこつれてくの」

「とりあえずコースの外!ほら氷持って」

「先輩なんでそんな落ち着いていられるんだべ!?」

「自分のことだから」

良いから手伝え、と松っつんに言われて浩介がおとなしくなる。・・・教育係すげえな。
とりあえず氷で真っ赤というかどす黒くなった足を冷やす。ふと視線を横にずらすと、見慣れた大きい目がこちらをじっと見つめている。

「・・・何やってんの、お前」

「私のせいじゃない」

「だろうね。・・・アイツも大学やめちゃうんじゃない?」

「そりゃそうだべ!!琴葉先輩はうちのエースっちゃ!」

「うーんそれはそれで何か罪悪感」

「向こうのが後悔は大きいだろ」

「マルさんは何しに来たんですか!これからコイツ病院に連れてかなきゃならないんでいいですか!?」

松っつん焦りすぎ。・・・あ、智己ちゃんが監督連れてきた。私が怒られませんように。
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