チーム・バチスタの栄光
□白銀のワルツ
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私の名は桐生恭一。先日義弟の鳴海涼とともに日本へやってきた。
そして、今日は東城医大でオペ見学を行う予定だ。
「・・・義兄さん、誰に向かって話しているの?」
「・・・」
リョウの視線が痛いのは、きっと気のせいだと思いたい。
「桐生君、鳴海君、東城医大へようこそ。病院長の高階です」
「はじめまして、桐生です。本日はよろしくお願いします」
「鳴海涼です」
にこにこと愛想良く笑う病院長に儀礼的に会釈する。
オペ室へ行く途中に、オペ室付近の大まかな構造を説明された。途中第一外科の教授だという黒崎教授にも会った。
黒崎教授ににらまれたりしつつも、オペの見学をするようだ。
「執刀医は、刹那君です。過去に数回バチスタ手術の経験もあり、院内のホープです。・・・ただ、少し働きすぎますがね」
「そんなにすごいんですか。今回の手術が楽しみですね」
リョウが特徴的な声で言い、私も賛同するよう頷く。高階病院長はにこりと笑ってモニター室のドアを開けた。
一言二言話しているうちに、メンバーが集まり始めた。準備が整うと、最後に二人入ってくる。刹那と、器械出しだろう。
オペが始まった。
オペの最中、私もリョウも声を出すことすらできなかった。隣では、病院長が満足そうに笑っているのが見える。
踊るように滑る、白銀のメス。心臓も、まるで切られるためにあるようだ。気がつけば、もう人工心肺を切る場面まできた。
「最鼓動、確認しました」
淡々とした声が告げる。刹那はひとつ頷いて、縫合に入った。
その光景が、あまりにも美しくて、声はやはり出なかった。