小説
□rotten love
1ページ/1ページ
【rotten love】
「それじゃーまたな」
「はいっ」
収録が長引いて夜中までかかってしまった。
つるのさんと別れて俺はいつも通り家に向かった。
外は真っ暗で月明かりもほとんど差さない。
時間が経つにつれて寒くなってくる。
寒さを紛らわすために携帯を開いた。
別にメールするわけでもないのにメール作成画面を開いてみたり、受信メールをひとつひとつ読んでいったり、いままでの写メをじっくり見ていたり。
とにかくひとりだからすることなくてつまんなかった。
「あー、寒いなー」
なんて呟いてみたり。
でも相手してくれるのは冷たい風だけ。
早く帰ってあったまりたいな…。
―ザッ
「…?」
突然物音が聞こえた。
物音っていうか、足音?
振り返ってみると誰もいない。
最初は気のせいだろうと思った。
けれど、俺が歩き始めると、その音が一緒についてくる。
もう一度振り返ってみると、やっぱり誰もいない。
(……なんか、怖ぇ…)
そう思って、少し歩くスピードを速めた。
でも、後ろから聞こえる音もだんだん早くなってきた。
そうするといろいろ考えさせられる。
俺襲われる?殺される?
俺は走った。
できるだけ早く家に着くように。
後ろの音もスピードを上げた。
角を曲がってもついてくる。
チラッと後ろを見ると、人影が見えた。
やっぱり気のせいじゃなかった。
(…怖ぇ、怖ぇよ…)
必死に走った、全力で走った。
息が切れるなんて関係ない。
今は逃げないと、大変なことになりそうな気がするから。
逃げても逃げても、追ってくる。
まだ家まで距離あるし、このままじゃ体力もたないかも…。
「わっ!!」
躓いてしまった。
もう終わったって思った。
すると街灯に照らされて映し出された影が俺を覆った。
街灯の逆光で相手の顔はよく見えなかった。
どんどん恐怖感が溢れてくる。
目がじわっと熱くなって泣き出しそうになった。
「な、なにすんだよ!」
「…」
そいつは答えることはなかった。
だから余計に怖く感じる。
ゆっくりと俺に近づいて手を伸ばす。
「っ…」
ガシっと力強く腕をつかまれた。
無理矢理引っ張って俺を立たせ、ようやくそいつの顔が光に照らされた。
切れ長の目で俺のことをじっと見つめてくる。
「上地…」
「っ!!」
俺の名前を呼ぶと同時にそいつの唇が俺の唇に重なった。
相手を殴ってやろうかと思ったけど、腕をつかむ力が強すぎてとても抵抗できるような状態じゃない。
いつの間にか舌が口の中に入ってきていた。
ぐるりと一周して俺の舌に絡ませてくる。
「あ、ふっ」
長い時間俺たちは口付けを交わしていた。
俺はこんなの望んでないのに…。
「ん……っ何、すんだ…」
「俺はあんたの…ただのファンだ」
ファン?
違う…こんなことする奴なんて…。
「ストーカーだろ…」
「…違うな…ファンだ」
「う、っ」
ズボン越しに股間を撫でてきた。
思わず力を込めてぴくっと動いてしまった。
それに気づいたのか、そいつはニヤリと笑った。
「こっちこい」
「あ、ちょ…」
引っ張られて連れてこられたのは街灯のない路地。
誰も通ることのない雰囲気を醸し出している。
するとガッと顎をつかまれた。
下から俺を見上げて鋭い視線を刺してくる。
抵抗しようにも片手で俺の両手を抑えてるから、動くことができない。
片手のくせに、ちょー力強い…。
「期待してたりする?」
「す、するわけなっ…」
俺が言い終わる前に奴はまた口付けしてきた。
さっきと同じように舌を捻じ込ませて犯してきた。
すると、ズボンへと手を入れてきた。
「なっ!!」
俺の中心のモノをぎゅっと握ってきた。
同時に痛みが走る。
けど、俺のは…反応してしまう。
「大きくなってるよ?」
「あ、んっ……お、まえの…せっ……あっはぁっ」
素早く手を上下に動かす。
こんなことはされたくない…でも快感がぞくぞくと背中から伝わり、全身に届く。
「んっんっ…や、めぇ…」
「感じてるくせに…」
首筋にキスをひとつしてきた。
慰めでもしてるんだろうか…余計に涙が溢れるっつーの。
それでも奴は動きを止めない。
むしろどんどんスピードが速くなってく。
「汁でてるよ〜?上地って我慢するんだね?」
「っるさ……んで、こんな…」
「だから…ファンだってば」
次は首筋をべろーっと舐めてきやがった。
ストーカーってほんと怖ぇ。
「ん、も…」
「だしてもいいよ?」
「ら、らめ…っ、で、そ…」
「んぁっ!!」
―ドクッドク
熱のこもった液体が奴の手の中に流れていく。
パンツの中なんてもうぐちゃぐちゃ。
にちゃにちゃと音を鳴らしながらまた扱いてきた。
「いい加減に…」
「…ん、そうする」
「……」
あっさり行為をやめた。
「今全部奪っても面白くないからねー」
「……」
「…その目好きだなー俺」
「…また俺のこと…」
「うん、見つけたらやっちゃうかもね」
手についた液を舐めりながら言った。
なんでこいつ、こんなに笑顔なの。
俺に散々なことしたくせに。
「上地、雄輔……必ず俺のものにする」
「……勝手なこと………あっ」
不意にぎゅっと抱きしめられた。
けど優しくて、さっきの感じとは違った。
「だからぜってー誰にも渡さねー」
「…ん…」
思わず相手の背中をぎゅっとつかんだ。
俺は恋する女かっつーの。
でもあったかくて、嫌な気持ちじゃなかった。
*
ストーカーは俺の目の前から去っていった。
名前、聞かなかったな……っていうかストーカーの名前知りたい人なんていないよな。
冷たい風がビュウっと俺に吹きつけてきた。
身震いをすると携帯が震えた。
「電話…はい?あ、つーのさん!ね!今から家いっていー?」
つるのさんは「はいはい」って言って「いいよ」って言ってくれた。
なんでだろう…なんでそんなこと言ったんだろ。
なんか、誰かが隣にいないと寂しいからかな?
『俺の話聞っ』
「あ!そーだ!俺さ、ストーカーに遭っちゃった」
『は?なに言ってんだ?っていうか俺の話―』
「そんでさー!」
『ちょ、聞けって!』
誰かと話してないと落ち着かなかった。
胸が少しドキドキしてて…落ち着かなかった…。
「もーちょービクッたわけ!」
『お前、会話する気ねーのか?』
END
----------
ひかるさんリクエストありがとうございまーす
ストーカーで書いてくださいってビックリしましたよ(笑)
でも楽しく書いてましたー^^
いつも通りオチが酷い^q^
心音の言いたいこと「ストーカー、ダメ。ゼッタイ。」
リクエストいつでもお待ちしております!