小説

□rotten love
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【rotten love】








「それじゃーまたな」
「はいっ」

収録が長引いて夜中までかかってしまった。
つるのさんと別れて俺はいつも通り家に向かった。
外は真っ暗で月明かりもほとんど差さない。
時間が経つにつれて寒くなってくる。
寒さを紛らわすために携帯を開いた。
別にメールするわけでもないのにメール作成画面を開いてみたり、受信メールをひとつひとつ読んでいったり、いままでの写メをじっくり見ていたり。
とにかくひとりだからすることなくてつまんなかった。

「あー、寒いなー」

なんて呟いてみたり。
でも相手してくれるのは冷たい風だけ。
早く帰ってあったまりたいな…。

―ザッ

「…?」

突然物音が聞こえた。
物音っていうか、足音?
振り返ってみると誰もいない。
最初は気のせいだろうと思った。
けれど、俺が歩き始めると、その音が一緒についてくる。
もう一度振り返ってみると、やっぱり誰もいない。

(……なんか、怖ぇ…)

そう思って、少し歩くスピードを速めた。
でも、後ろから聞こえる音もだんだん早くなってきた。
そうするといろいろ考えさせられる。
俺襲われる?殺される?
俺は走った。
できるだけ早く家に着くように。
後ろの音もスピードを上げた。
角を曲がってもついてくる。
チラッと後ろを見ると、人影が見えた。
やっぱり気のせいじゃなかった。

(…怖ぇ、怖ぇよ…)

必死に走った、全力で走った。
息が切れるなんて関係ない。
今は逃げないと、大変なことになりそうな気がするから。
逃げても逃げても、追ってくる。
まだ家まで距離あるし、このままじゃ体力もたないかも…。

「わっ!!」

躓いてしまった。
もう終わったって思った。
すると街灯に照らされて映し出された影が俺を覆った。
街灯の逆光で相手の顔はよく見えなかった。
どんどん恐怖感が溢れてくる。
目がじわっと熱くなって泣き出しそうになった。

「な、なにすんだよ!」
「…」

そいつは答えることはなかった。
だから余計に怖く感じる。
ゆっくりと俺に近づいて手を伸ばす。

「っ…」

ガシっと力強く腕をつかまれた。
無理矢理引っ張って俺を立たせ、ようやくそいつの顔が光に照らされた。
切れ長の目で俺のことをじっと見つめてくる。

「上地…」
「っ!!」

俺の名前を呼ぶと同時にそいつの唇が俺の唇に重なった。
相手を殴ってやろうかと思ったけど、腕をつかむ力が強すぎてとても抵抗できるような状態じゃない。
いつの間にか舌が口の中に入ってきていた。
ぐるりと一周して俺の舌に絡ませてくる。

「あ、ふっ」

長い時間俺たちは口付けを交わしていた。
俺はこんなの望んでないのに…。

「ん……っ何、すんだ…」
「俺はあんたの…ただのファンだ」

ファン?
違う…こんなことする奴なんて…。

「ストーカーだろ…」
「…違うな…ファンだ」
「う、っ」

ズボン越しに股間を撫でてきた。
思わず力を込めてぴくっと動いてしまった。
それに気づいたのか、そいつはニヤリと笑った。

「こっちこい」
「あ、ちょ…」

引っ張られて連れてこられたのは街灯のない路地。
誰も通ることのない雰囲気を醸し出している。
するとガッと顎をつかまれた。
下から俺を見上げて鋭い視線を刺してくる。
抵抗しようにも片手で俺の両手を抑えてるから、動くことができない。
片手のくせに、ちょー力強い…。

「期待してたりする?」
「す、するわけなっ…」

俺が言い終わる前に奴はまた口付けしてきた。
さっきと同じように舌を捻じ込ませて犯してきた。
すると、ズボンへと手を入れてきた。

「なっ!!」

俺の中心のモノをぎゅっと握ってきた。
同時に痛みが走る。
けど、俺のは…反応してしまう。

「大きくなってるよ?」
「あ、んっ……お、まえの…せっ……あっはぁっ」

素早く手を上下に動かす。
こんなことはされたくない…でも快感がぞくぞくと背中から伝わり、全身に届く。

「んっんっ…や、めぇ…」
「感じてるくせに…」

首筋にキスをひとつしてきた。
慰めでもしてるんだろうか…余計に涙が溢れるっつーの。
それでも奴は動きを止めない。
むしろどんどんスピードが速くなってく。

「汁でてるよ〜?上地って我慢するんだね?」
「っるさ……んで、こんな…」
「だから…ファンだってば」

次は首筋をべろーっと舐めてきやがった。
ストーカーってほんと怖ぇ。

「ん、も…」
「だしてもいいよ?」
「ら、らめ…っ、で、そ…」

「んぁっ!!」

―ドクッドク
熱のこもった液体が奴の手の中に流れていく。
パンツの中なんてもうぐちゃぐちゃ。
にちゃにちゃと音を鳴らしながらまた扱いてきた。

「いい加減に…」
「…ん、そうする」
「……」

あっさり行為をやめた。

「今全部奪っても面白くないからねー」
「……」
「…その目好きだなー俺」
「…また俺のこと…」
「うん、見つけたらやっちゃうかもね」

手についた液を舐めりながら言った。
なんでこいつ、こんなに笑顔なの。
俺に散々なことしたくせに。

「上地、雄輔……必ず俺のものにする」
「……勝手なこと………あっ」

不意にぎゅっと抱きしめられた。
けど優しくて、さっきの感じとは違った。

「だからぜってー誰にも渡さねー」
「…ん…」

思わず相手の背中をぎゅっとつかんだ。
俺は恋する女かっつーの。
でもあったかくて、嫌な気持ちじゃなかった。





ストーカーは俺の目の前から去っていった。
名前、聞かなかったな……っていうかストーカーの名前知りたい人なんていないよな。

冷たい風がビュウっと俺に吹きつけてきた。
身震いをすると携帯が震えた。

「電話…はい?あ、つーのさん!ね!今から家いっていー?」

つるのさんは「はいはい」って言って「いいよ」って言ってくれた。
なんでだろう…なんでそんなこと言ったんだろ。
なんか、誰かが隣にいないと寂しいからかな?

『俺の話聞っ』
「あ!そーだ!俺さ、ストーカーに遭っちゃった」
『は?なに言ってんだ?っていうか俺の話―』
「そんでさー!」
『ちょ、聞けって!』

誰かと話してないと落ち着かなかった。
胸が少しドキドキしてて…落ち着かなかった…。

「もーちょービクッたわけ!」
『お前、会話する気ねーのか?』





END








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ひかるさんリクエストありがとうございまーす
ストーカーで書いてくださいってビックリしましたよ(笑)
でも楽しく書いてましたー^^
いつも通りオチが酷い^q^
心音の言いたいこと「ストーカー、ダメ。ゼッタイ。」

リクエストいつでもお待ちしております!

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