小説

□砂糖よりも甘く・・・
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【砂糖よりも甘く・・・】








いつもの変わりない帰り道。
夜になると人通りが少なくなる。
怖いってことはないけど、人の気配がないと寂しい。

僕に残されたものなんて…もう無いんだ…。
何をやってもうまくいかないし、周りからは批判を受ける。
“時の人”にはなったけど、二人がどんどん遠ざかっていく。

とその時。

「…おい」

僕を呼びとめる声がした。
けれど僕は、聞こえないふりをして歩き去ろうと思った。
でも、思わず立ち止まってしまった。

「雄ちゃん…?」

よく聞くあの人の声。
忘れるなんてことは絶対しない。
大雑把だけど、尊敬できて、頼れるあの人。
僕は振り返った。
彼の姿を確認するために。

「……君…誰」

パッと見は雄ちゃんだけど、彼からは全く違う雰囲気がした。
服装だって学生服を着ているし、髪型もいつもと違う。

「…金よこせよ」

いきなりそう言ってきた。
雄ちゃんの顔をしてるから不気味に思えた。
彼はゆっくりと僕に近づいてくる。
それに伴って僕は少しずつ後ずさりする。

「…逃げんな」
「……」

一歩一歩歩み寄る。
そして僕が走ろうと思ったとき―
―ガシッ

「うっ…」

腕を思いっきり掴まれた。
一瞬殴ってでも逃げようかと思ったけど、殴れるはずがない。
だって雄ちゃんの顔なんだ…そんなこと…。

「逃げんなって…少し金くれればいーんだよ」
「いやだっ、放せっ」

必死に抵抗するが彼は一向に力を緩める気配がない。
声をあげようともしたが、ここで誰かに見つかって雄ちゃんが疑われるのもいやだ。
だから必死に振り払おうとした。

「ちっ…」

―バキッ

「がはっ!」

重い一撃が僕の頬に直撃した。
アスファルトに倒れ込み、カバンの中身が散らばった。

「…ん」

彼は何かを見つけたようだ。
しかし、財布ではない。
それを拾い上げ、じっと見つめた。

「こ、こいつ…」

それは僕と雄ちゃんが写った写真だった。
デートした時の写真だ。
っていっても、雄ちゃんはデートって思ってなかったと思うけど。
僕にとっては最高のデートだった。

「……どうなってやがる…」
「…君こそ、誰なのさ」

彼は写真から目を離し、僕を見た。
さっきまでの鋭い目つきとは違って、今の状況が理解できず、困惑してるようだった。

「俺は……」
「なんで、雄ちゃんの顔してるの?」
「お、俺は“江夏”だ!!“雄ちゃん”なんてしるか!」

江夏……江夏って…。

「江夏、卓…」
「なっ」
「……どうなってるのか、僕にもわかんない…」

とりあえず、彼を僕の家に招いた。
多分、行く宛がないようだったから。





「…なんのつもりだ」
「別に…可哀想に思えたから…かな」
「…なめてんのか」

口調は悪いけど、力強さがなかった。
きっと何が何だかわかんないのだろう。
僕だって、君がここにいることがわけわかんないよ。

「…こいつ」

江夏くんはさっきの写真を握り締めて僕に訊いてきた。

「…僕の大事な人……とっても優しくて、人懐っこくて、楽しくて…」
「お前の…恋人か…」
「ううん、僕が一方的に好きなだけ……雄ちゃんにはまだ何も言ってない」

そう…ただ勝手に僕が好きになってるだけ。
雄ちゃんなら、「うんいいよ」って付き合ってくれそうだけど……今は言わないでおく…。

「江夏くんって、喧嘩する人だけど…意外と優しいんだね」
「…優しくねー……っつかなんで俺のこと知ってんだよ」
「……さぁ」

江夏くんは本当は存在しない人でドラマの役柄なんだよ、って言ったらきっと混乱するだろう。
だから言わない。
なんかまた殴られそうな気もするし。

「はい、お腹すいたでしょ?」

有り合わせで作った野菜炒めとお肉を焼いたものをさし出した。
彼はそれをじっと見つめた。

「…食べないの?」
「……食うよ……いただきます…」
「あ、『いただきます』って言うんだ」
「なぁっ!!ばっ!こ、これはっ!」

顔を赤くして取り乱し。
ギャップの差がありすぎ。
やっぱり中身はしっかりしてるんだね。

「ふふ、別に恥ずかしがらなくても」
「っ!っるせ!」

誤魔化そうとがつがつ食べ始めた。

「お風呂も入る?あ、今日泊まっていけば?」
「……んだよ…見ず知らずの奴に優しくしやがって…」
「んー、見ず知らずっていうか…雄ちゃんだから接しやすいんだよね」

僕は立ち上がり、風呂場へ向かった。
雄ちゃんが好む湯加減に設定して、あとはあったまるの待つだけ。
性格が違ってもきっと彼は好んで入ってくれるだろう。

「あ、食べ終わった?」
「あ、あぁ……ごっそさん…」
「へへ」
「なんだよ……」
「いや、全部食べてくれたなって思って」

綺麗に残さず食べてくれた。
こういうところは雄ちゃんと違うかな。

「あと少しすればお風呂入れるよ?僕の着替え貸してあげるから」
「お、おぅ…」
「あ、でもサイズ合うかな?」

食器を台所に置いて彼に合いそうな服を探した。
あんまり身長差もないし、たぶん着れるとは思うけど。

「はい」
「…し、下着も…」
「あ、やっぱり他人の使うのヤダ?」
「い、いや…お前は…」
「僕?…ほんとは貸したくないけど…雄ちゃんにならいいって思ってるから…って、江夏くんは雄ちゃんじゃないか」

僕、何言ってんだろ…。
別にそんなこと言う必要なかったのに…僕のバカ…。

「ぼ、僕、食器洗ってく―」
「一緒に入れ…」

急に抱きしめられ、言葉が止まってしまった。
チラッと彼を見ると、寂しげな顔で遠くを見つめていた。

「いいよ…狭いし…」
「俺じゃ…あいつの代わりになれねーのか…」
「!」

あいつの…代わり……雄ちゃんの、代わり…。
最初は何を言ってるのかわからなかった。
けれど、すぐに理解した…。
彼が……江夏くんが雄ちゃんの姿をしているのなら…江夏くんが僕を受け入れてくれるなら……僕の全てを預けても…いいのかもしれない…。





「やっぱり…恥ずかしいよ…」
「あいつだと思ってればいいだろ」
「雄ちゃんとこんなことしたことないよ!」

僕が恥じらうのも無視して彼は衣服を脱ぎ始める。
すぐに上半身が現れる。
普段はそういう光景を見てもなんとも思わないのに、今だけは別。
見ただけでドキドキする。

「ほら、お前も脱げよ」
「あぅ……さ、先入っててよ!あ、あとで行くから…」
「………」

江夏くんは無言で浴室に入った。
あとで行くって言っちゃったから、行かないと怒鳴られそうだし…。
でもやっぱり恥ずかしい…。
それでも僕は服を脱ぎすて、自分の家のお風呂なのに腰にタオル巻いて扉を開けた。

「ぅ…」

すぐに江夏くんの姿が目に映り、ボッと顔が赤くなる。
やばいよ…これ…。
裸だから、余計にやばいって…。

「こいよ…」
「…ぅ、うん…」

彼の方に近づくと、グイッと引っ張られ彼の上に乗せられた。

「あ、ぅ……こ、これ…」
「ん?」

江夏くんはもちろんタオルなんて巻いてない…だから彼のが直接あたる。

「あ、あたってるって…」
「あててんだよ……興奮すんだろ?」
「そ、そんな…」
「嘘つけ…」

巻いていたタオルを外されて僕の中心のモノをきゅっと握った。
僕は思わず「んっ」といやらしい声を出してしまった。

「感じるか…」
「ぅ……んんっ」

抵抗なんてできる気がしない。
体中の力がみるみるうちに抜けていく。
江夏くんは僕のソレを掴んだまま手を上下に動かし始めた。

「ふっ…ひ、あ…あ、んっ」
「いい声出すな……もっと鳴けよ…」
「んんっ」

ぎゅっと力を込めて、先端を親指で擦った。
僕はびくびくっと体を震わせた。

「ふぁ…」
「ん……先走り出てんぞ…」

それをまたクリッと親指で拭き取った。

「んぁっ…もう…」
「出そうか?出せよ」

―にちゅにちゃ

「ふっ、ふっく…」
「…ん」
「や…やめてっ!」

このままじゃイヤだって思って立ち上がり、浴槽に浸かった。
もう限界だったけど、なんとか我慢した。
何やってんだろ…。

「……」
「な、なに…」
「いや…」

すると江夏くんも浴槽に入ってきた。
2人だととてもじゃないけど狭い。
距離はとってるつもりでもものすごく近い。
江夏くんは僕をじっと見てくるし。

「…そ、そろそろ僕上がるね」
「待てよ……まだ入ったばっかりだろ?」

そう言われ、元の位置に戻された。
すると落ち着く暇もなく彼が突然キスをしてきた。

「ん……ちょ、ぁん」

また出そうになってきた。
それを察したのか、江夏くんはまた僕のを掴み扱いた。
お湯の中だと変な感じ…。

「ん、あ…や…やめへ…」
「出しとけって言ったろ…」

ものの数十秒で―

―ドクッドクッ

「は、はぅ……」
「……」





お風呂から上がり、なんだか気まずい空気が流れた。
僕はバスタオルを被ったままうずくまって、江夏くんは僕の傍で座っていた。
まさかあんなことになるなんて予想してなかったし……第一、彼から誘うなんて…。

「なぁ」
「!な、なに」
「……あいつの代わりになれたか…?」
「あ…ま、まだわかんないよ…」
「……そうか…」
「あ―」

ゆっくり押し倒された。
目を細めて、僕をじっと見つめてくる。

「……ぁん」
「ん、っん」
「ゃ、んっ…はっ…」

お互いに舌を絡ませ合い、熱を帯びさせていく。
すぐに息が荒くなり、キスを解きたいくらいだ。
でも、彼とするキスは格別な感じがして…解きたいけど解きたくない…なんだかわけがわからなくなりそうだ。
それくらい、彼のことが好きになってしまう。
埋まらなかったものがようやく埋められるような気がした。

「どうだ…」
「ん……代わりっていうか…君自身が好き…」
「え…」
「雄ちゃんじゃなくて…江夏くんが…好き…」

ぎゅっと彼を抱きしめた。
お願いだから離れないで…どこにも行かないで…僕をひとりにしないで…。





END








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ななトモさんリクエストありがとうございます
江恥でしたが…久しぶりの恥ぃ坊登場です
そしてまたしても心が名前だけ^q^
しかし、今回のえなったんは優しすぎた

リクエストいつでもお待ちしております!

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