小説

□hot & soft
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【hot & soft】





-enatsu side-

雪の降る寒い冬の夜だった。
俺が街中をほっつき歩いているときだった。
奴が俺の目の前で急に倒れた。
知らねー奴だしほっとこうと思った。

―コソコソ

周りの奴らが一斉に俺を見て耳打ちやら文句を吐き始めやがった。

「っ、てめぇら見てんじゃねーぞコラァ!!」

俺は思わず怒声を放った。
すると周りは嫌悪の念を持ったまま立ち去って行った。

「んだよこいつ……おい、起きろよ…起きろっつってんだろ!」

倒れた男は真っ青な顔をして、目を覚ます様子はなかった。
仕方なく俺は、その男を―











-taro side-

「っ!」

俺が目を覚ますと、そこは見慣れない部屋だった。
シンプル、というか……ごちゃっとしてない。

「お、やっと目ぇ覚めたか…」
「え、あの…」
「てめぇぶっ倒れたんだよ、俺の目の前で」
「あぁ……そういえば…」

街を歩いていたら、お腹が減って、それで目の前が真っ暗になって…。
気がついたら、この人がいて…。

「…君が、俺を運んでくれたの?」
「あぁ……ほっとくと周りがうっせぇからな」
「はは……ありがとう」
「なっ…っせぇ……」

照れてるのかな?
…よくみると、この人は学生のようだ。
部屋には学ランが置いてある。

「…君は一人で暮らしてるの?」
「だからなんだよ……」
「学生なのに?」
「…」
「大変じゃない?」
「…」
「ご飯とか」
「っっせぇんだよ!!」
「っ!」

彼は俺の胸倉をグッと掴んだ。
その時の彼の顔は……なぜか悲しげだった。
掴んでいる手も震えていた。

「……君は…つらい思いを、したんだね」
「っ!……なっ、おま…」

胸倉を掴む手からゆっくり力が抜けていくのがわかる。
彼はうつむいたまま、床に座った。

「……暴行、したの?」

俺がきくと、彼は黙って頷いてくれた。
2度と犯したくはない罪―
俺はそう思ったが、彼がどう思ってるかなんて…わからない。

「…そうだ、君の名前は?」
「……このタイミングかよ……」
「このタイミングだからだよ。空気変えないと」
「…江夏、卓」

江夏くん、か…。

「俺は佐藤太郎、よろしくね」
「…なんだよ、この手」
「握手、ね?」
「ば…ばかばかしい……」

江夏くんは正面にいる俺から顔を背けた。
やっぱり照れてるのかな。
高校生っぽくていいね。

―ぐー

「…は?」
「あ…はは…お腹なっちゃった」
「………はぁ…」

江夏くんは溜息をついて立ち上がり、台所に向かった。
しばらくすると、手にカップ麺を持っていた。
それをテーブルに置くと、俺を見た。

「…食え」
「え?」
「いいから、食え」
「…いやいや、いいよ。迷惑掛けてるのに、こんなことま…」
「いいっつってんだろ!?」
「は、はい!い、いただきます!」

怒声に思わず敬語になってしまった。
優しい面もあるけど、やっぱりそういう子なのかな。

―ふー

―ツルツル

「ぅんまい!」
「はぁ?ただのカップ麺だぞ?」
「いやぁ、俺さ、ど貧乏でこんな贅沢なもん食べれないんだよね〜」
「び、貧乏、なのか…」
「うん、しかも子持ち…3人ね」
「はっ、結構ヤるんだな」
「う、うるさいなー!」

っと言いたいけど、実際そうなのかも。
貧乏なのに、子供3人も作っちゃうなんて。
優希もいないし……。

「優希…」
「あ?なんか言ったか?」
「あ、いや、別に…」











-enatsu side-

「ごちそーさま。江夏くん、ありがとね」
「…別に」

佐藤太郎は俺の顔を見ながら笑ってやがる。
なんか、こいつといると…調子狂うな。
奴の性格がやんわりしてるっていうか…俺と対称的で。

「勝手に江夏くんの目の前で倒れて、運んでもらって、ベッドまで貸してもらって、カップ麺食べさせてもらって……ほんとにありがとう」
「………」

なんなんだよ、こいつ。
俺が過去にどんなことしたかわかってるくせに。
なんでこいつは…俺に笑顔を見せる?
…俺も……堕ちたな…。

―ギュッ

「え、、江夏、くん??」
「抱いてやるから……黙っとけ…」
「な、なに言って…」

奴の口に接吻した―
俺にとっては初めてのこと。

「お前には俺が…どう映ってる?“イイ奴”か?」
「は、ぇ?」
「勘違いしてんじゃねーぞ…」

顎を掴み無理矢理舌を捻じ込む。
奴の目から涙がこぼれた。
俺は構わず服を剥ぎ取った。











-taro side-

江夏くんの指が俺の中へと入ってくる。
涙が止まらない。
痛みも、恥じらいも。
声が漏れる…ただ相手のすることに喘ぐだけの恥ずかし声。

「はぁ、、ぁっ」
「もっと…鳴け…もっと…泣け…」

江夏くんは目を細めて俺を見る。
なぜか……なぜかつらそうにみえる…。

「え、なつ…く…」
「あ?」
「どう…したいの…」

震える声で俺はきく。
するといれていた指がゆっくりと抜かれていく。

「…どうされてー?」
「え…」

彼は笑みを浮かべた。
そしてまた、キスを迫られた。

「んっ、、ん」

そのあとされたことは、とてもじゃないけど……痛かった。











-enatsu side-

「サイテーだよ……」
「あぁ…」
「学生とは思えない……」
「あぁ…」
「最近の若者って…」
「っるせぇよ!」

ゴタゴタ言う奴に俺はさすがにキレた。
咥えてた煙草を一気に吸い上げ、灰皿で潰した。

「うるさくないよ!大体、こんな30のおっさん犯して何が楽しいんだよ…」
「……恩返しって思えよ…こっちはお前を助けてやったんだよ」
「…頼んでないし…」
「あぁ!?」
「な、なんでもない…」

佐藤太郎は掛け布団を被りベッドの中に潜った。

「…卓…」
「?」
「卓くんって呼んでいい?」
「あ…はぁ?…勝手にしろ…」
「じゃー、俺のこと太郎って呼んでよ」
「………た、ろ…」

それをきくと………太郎、は憎たらしいほど笑顔になりやがった。
…こういう奴はやっぱ苦手だ…あいつみたいで……あのクソ教師と…。

「…じゃ、俺、そろそろ帰るね。子供のことも心配だし」

ボロボロの服を着ながら言った。
ハタから見ればほんとみすぼらしい。

「じゃぁ…ね」

あいつが玄関の扉に手をかけようとした時―

「あ―」

―また来いよ

「っ……」
「…?どうかした?」

俺は…何を言おうとした?
今あいつにどんな言葉をかけようとした?
くそっ………頭狂ったか…。

「太郎…」
「うん?」

いつの間にか俺はあいつを抱きしめてた。
俺らしくない行動……自分でもわかってる。
けど体が勝手に動くんだよ……ふざけんなよ。

「ちょ、苦しっ」
「……暇なら来いよ…」
「え?」

あーあ。
一番言いたくないことまで言った。
何こいつに期待してんだよ…。
俺はそっちに興味ねぇし……けど…。
けど…こいつになら好意持ってもいいって、どっかで思ってる。

「…卓くん、目つむって」
「ん…」

その瞬間、頬に触れる微かな温かみ。

「俺…おかしくなったかな、男の子にキスするなんて…」
「……別におかしくねぇよ…」

俺からもキスをした。
頬じゃなく、唇に。

「やっぱり、卓くんはいい人だよ」
「…あっそ」
「素直に受け止めろよー」
「うるせっ」

―コツン

「痛っ、ちょ、本気ででこピンすんな!」
「あー!もー!うっせぇんだよ!さっさと帰れ!」
「な、酷っ……わかった、帰る、かーえーりーまーすー!」

まるでケンカした恋人みたいだな……恋人?
…とうとうイカレたか。
けどよ……。

「待ってっから」

既に誰もいない玄関に向かってぶつけた言葉。
もう、会うことはない気がする。





「俺も待ってる…」

扉に背もたれて呟いた。
卓くんは、いい子だよ。
でも、これが最初で最後だと思う。





END







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ども!管理人です!
これから時々こんなコメントつけようかと思ってますっ
今回はたろーとえなったんなんですが、このカップリングはいかがでしたか?
とりあえず、えなったんはドSです
たろーは書いてていじめ過ぎちゃいます(もう病気だなこりゃ…
だって可愛すぎなんですもん
あ、そーいえば、今回の書き方なんですが、地の文をたろーとえなったん交互に書いてるんですよ!我ながらいいアイディア(←え
…あら、意外にコメント長い…
こ、この辺でっ(逃走

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