小説
□try with you
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―あなたにその気がなくても
―僕はあなたが欲しい
―あなたは僕だけのモノ
try with you
「たーけにっ」
「わっ！…なんだ直樹かぁ…」
後ろから背中をちょっと押しただけなのに、驚きすぎ。
やっぱり…歳のせい？
「そんなに驚かなくても〜…あ！今日ご飯食べに行きません？」
「あ〜わりっ、このあと仕事はいってっから」
「…そーですか………じゃあまた今度誘いますね」
いつもタイミングが合わない。
もっと僕に振り向いてよ。
―ぐっ
「？…直樹？」
「え？あ、すみません…」
無意識に剛兄の服を掴んでた。
そう…無意識に…。
「…そんなに行きたかった？」
「え…そ、そうじゃなくて………あの、無意識に…」
「…無意識になるくらいなんだから…行きたいんでしょ？」
「えと…でも、剛兄仕事あるって…」
「………まだ時間あるし、行こっか？」
「えっ！？」
僕は剛兄に引っ張られるがままに外に連れられてきた。
…これでよかったのかなぁ…。
＊
＊
＊
「でさぁ、またなんで俺なわけ？」
「え…？」
「ユースケとかいるじゃん」
「………剛兄と一緒がよかったんです」
思わずそんなこと言っちゃったけど…。
チラッと剛兄の顔見るとポカンとしてた。
「………なんか悩みでもあんの？」
「へ？」
「いやだって、俺誘うぐらいなんだもん」
「い、いやぁ…」
悩みあるっていわれると、ある。
けど剛兄には言えない悩み。
本人に…本人のこと訊くのって難しいよ…。
「あるんだなぁ〜？言ってみ」
「えぇ…無理だよぉ…」
「無理？なんで？」
「え、いや………あ、剛兄が解決するのは無理ってこと」
ってそれじゃ相手傷つけてるじゃん…。
こういうのなんだっけ…おけ、違う…墓穴掘った！
…こんなこと考えてる場合じゃない…。
―ぐい
「っ！」
いきなり剛兄は顔を近づけてきた。
この距離…限界かも。
「言うだけでもスッキリすんだから、言いなさいっ」
「で、でも…でもぉ」
「………直樹が言うまで俺仕事行かねーからなぁ。遅れた直樹のせいだよ？」
「えぇ！？勝手すぎます！！」
「だったら言うんだな！」
「拷問じゃないですかぁ！！」
剛兄は眉を上げて、険しい表情をしてる。
言うに言えない…。
けど言わなきゃ剛兄が仕事に遅れる…結果僕のせいに…。
「わ、わかりました…とりあえず、顔、放れて…」
「んっ」
「………え、と………ぼ、僕…」
「…」
「僕、剛兄が…好きです！」
ここが個室の居酒屋でよかった…。
みんなに見られてたらどうなってただろう…。
「…うん、俺も直樹好きだよ」
「え…えぇ！？」
「だって可愛いもんなぁ、ほんとの弟みたいで」
あ…そっち…。
「あの、剛兄？」
「そっかぁ、やっぱ直樹も俺を“兄”として慕ってくれてんだなぁ〜」
「あのっ」
「っていうか、すでに“剛兄”って呼んでるもんなぁ」
「剛兄！！」
「へ？」
一人で話を進めていた剛兄はけろっとした顔で僕を見た。
まるで鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔。
「あのね、僕の好きっていうのは…違うの！」
「ち、違う？」
「そ…どういう風に違うのかっていうと………いうと…」
「いうと…？」
―スッ
両手で剛兄の顔をそっと掴み、自分の唇を剛兄のほうへ近づける。
…触れ合った。
柔らかな感触。
微かにあたる息。
これが…剛兄…。
「…な、おき？」
「すみません………僕の“好き”は…こういう意味です…」
「………酒飲んでないよな？」
「飲んでませんよ………」
「じゃ、ほんとに…ほんとなんだな…」
「本当です…」
剛兄の顔が険しくなる。
僕のしたことは普通じゃないってことはわかってる。
間違ってるって…。
「剛兄、ほんとに………すみません…」
「いや…謝んなくていいよ」
「え…」
「…直樹」
剛兄の手が僕の顔に近づく。
気づいたら、剛兄の顔が目の前にあった。
そして再び―
「ん……んくっ」
「…ん…なお、き…」
剛兄から迫ってくるなんて、どういうつもり？
剛兄は…僕のこと好きなの？
「た、け…に………ど、して…」
「だって、直樹苦しそうだから」
「苦し？」
「うん………足りないって思ってるだろ？」
「…それは…」
「………直樹んち行ってもいい？」
「え………」
＊
＊
＊
僕の部屋に入るなり、剛兄はベッドの上に座りだした。
僕の方をじっと見つめて…喋ろうとしなかった。
けど、微笑んでた。
「剛兄………キス、してもいいですか？」
僕が訊くと、黙って頷いた。
僕はそれに誘われるかのように、ゆっくり剛兄に近づいた。
そして、重なる―
剛兄…僕を受け入れるの？
「ね、剛兄…」
「ん？なに？」
「えと………んっ」
僕が言葉に迷っていると、剛兄はズボンの上から僕の中心を触ってきた。
剛兄、わかってるんだ…。
「したいんだろ？」
「で、でも………」
「いいよ…直樹の好きにして」
そう言って服を脱ぎ始めた。
細くて、綺麗な体。
僕みたいな体育会系とは別もの。
「あ…剛兄の………」
「ん？…キスしたら………勃っちゃった」
笑いながら言った。
そういう姿見ると、ますます興奮するよ…。
「ね、直樹が攻めて？」
「…いいの？」
「うん」
剛兄を押し倒すと、優しい目で僕を見つめてきた。
「…ほんとにいいの？」
「いいってば………直樹がそれで満足できるなら」
満足…剛兄にその気がないなら、満足なんて…。
でも、手にしたい………剛兄が欲しい…。
「剛兄は…僕のこと好きなの？」
「ん？んー………好きだよ」
「…それって、弟みたいでーとかだったら許さないよ」
「だいじょーぶ、ラブのほうで！………あ、でも奥さんには負けるな」
「えぇ〜！？」
意地でも好きにさせてやるんだから。
「―わっ！ちょ、直樹！？」
「なに？」
「い、いきなり握るなよぉ…」
「………」
剛兄の言葉に耳も貸さずに、僕はソレを擦った。
熱を帯びた剛兄のソレは今にも何かを噴き出しそうに脈を打つ。
ビクビクと透明な液が流れてくる。
「…剛兄、もう漏れちゃったの？」
「うる、さ…」
「好きにしていいって言ったの剛兄だからねぇ〜？」
「そ、そう…だけど…」
剛兄、難しい顔して僕を見つめた。
口に出さなくても「やめて」って顔してる。
「しかも、攻めてって言いましたよね？」
「う…」
「誘ってるとしか思えませんけど？」
「うぅー…」
観念したのか、体の力を一気に抜いたみたい。
ギュッと瞑ってた目が徐々に緩んでいく。
「それに…」
―ちゅっ
「ひゃっ！」
「我慢してるんでしょ？」
「そ、そこ…舐めるとこじゃないってぇ〜」
「漏れてるから舐めてあげたんですよ」
「な、直樹ぃ………そんなキャラだったぁ？」
「剛兄にはこうしたくなるんですっ」
まともに会話したのがそれが最後だったかも。
そのあとは剛兄と深くキスをして、荒い息遣いしか聞こえなかった。
あとは…少し高めの音が響く。
「んっ！な、なお…き…や、ぁ」
―ちゅ くちゅっ ぢゅっ
「出したかったら…遠慮しないでください…」
「んっあぁ…も、もぅ……だめ、かもぉ…っ！」
耳元で囁くと、剛兄の体はぶるっと震えあがった。
それと同時に、剛兄のソレはビクビクと動く。
溢れんばかりに白い液体が流れ出る。
「やっぁ…」
「………見て、剛兄…こんなに出ましたよ」
「はっ…はぁ………直樹、まじでシラフ？」
「はい」
「うそだぁ…」
「僕だってやるときはやるんですよ」
そう言いながら手についた剛兄の液体を舐めり取った。
「ん…まずい、ですね…」
「っつかー、舐めんなってぇ」
「だって、剛兄のですよ？僕の大好きな」
「まだ付き合ってもねぇし…」
剛兄は携帯を見ながら呟いた。
「…あ」
「あ？」
「剛兄…仕事あるって」
「………あぁ！！忘れてたぁ！！」
「やっぱり…」
「どーしてくれんだよぉ！」
「あれぇ？“直樹んち行っていい？”って言ったの、剛兄ですよ？」
「うっ………そ、そうだった…」
困った顔の剛兄…可愛っ。
「じゃ〜あ〜…思い切って休んじゃいましょ！」
「そ、それ…キビーな…」
「それからぁ…本番しちゃいます？」
「し、しないからぁ！！こっちだって家庭を持ってる身だし！」
「今更戻れませんよ！僕の心はすでに剛兄
に奪われました」
「んだよその台詞…」
首を項垂れて溜息をついた。
こういう姿は…おじさん？
でも愛すべき存在、なんですよね。
「宣言します！」
「な、何！？急に…」
「いつか、必ず、僕に振り向いてもらいますから！」
「あ…あっそ…」
「もう！なんですか〜、その反応〜…もっと“よっしゃ来い！”みたいなことを〜」
「言わねーよ！…っつか服着させろ！」
「だめですよー。これから本番なんですからっ」
「だから、しねーって！！」
ふふ、この人のこういう所が好き。
絶対…僕のこと好きになってもらいますから…覚悟してくださいね？
END