Short story
□公園のベンチで
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「お前はまたー!!…何度やったら分かるんだッ!!」
会社の上司に怒られた。最悪。
「だからお前はいつまでたってもダメ人間なんだよ」
はいはい分かってます。俺はダメ人間ですよぉ。最悪な人間に言われたくないけどな。
それから上司が「食べに行かないか」とか誘ってきたから仕方なくいったらさ、部長の愚痴ばっか。
なんで俺がてめぇの愚痴に付き合わなきゃなんねーんだ。結局最後は俺への説教。はいはいわかってますよー。俺は何をやってもお前の足でまといになる若手社員。
・・・時間の無駄。人生のムダ。
そんなこと思いながら深夜まで付き合ったけど?しょうがないんだ。自分が会社で生き残っていくためなんだ・・・
そう思いながら夜の公園のベンチに腰かけた。
さっき自動販売機で買った缶コーヒーを開ける。中から温かい湯気が立ち込める。
月が闇夜を、公園を、そして俺を照らす。
なんだか悲しい風景だな。落ちこぼれのサラリーマンが夜のベンチに一人寂しく腰かけ缶コーヒーを飲んでるなんて。
あぁあぁ・・・
「おじちゃん」
わぁ!!?びっくりした。思わず缶コーヒーを手から滑らしそうになった。
いつの間にか小さな、まだ小学校に入るか入らないかぐらいの、かわいらしい女の子がベンチの脇に立っていた。
しかし今はサラリーマンが仕事終わったぐらいの時間だぞ。何でこんな時間にこんな小さな女の子が……
そんな考え事をしていた時、女の子はまた呼んだ。
「おじちゃん」
誰もが安らぐ、かわいらしい声。
「えっと…お譲ちゃん、こんな夜に何してるの?」
「おじちゃんこそ何してるの?」
女の子は聞き返してきた。まさか聞き返すとは思わずちょっとあわてた。
「え…っとね……」
とにかくこの女の子は何故こんな時間に外にいるのか。親は?
「おかあさんは?」
「え?分かんない」
分かんない?じゃ、迷子か。じゃあ交番に行こうかと言おうとした瞬間、
「おじちゃん、どうしたの?」
と聞かれた。
「おじちゃん、どうしてそんなに悲しそうなの?」
かわいらしい女の子が、心配そうに、こちらを見上げている。
はっとした。俺的には顔に出しているつもりは全くないのだが。
……俺の気持ちを感じ取った?
いやそんな、こんな小さな子どもに……
しかし、なんとなくこの子にかまってみたくなった。
なんだか俺の人生が変わるような気がして。面白半分だけど。