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□私じゃ駄目なの?
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『ウルキオラ…?』


自宮に向かう途中、廊下で貴方を見掛けて、思わず声を掛けた。


「何だ」


私の声に振り返った貴方は、相変わらず無表情で。
私に向けられる真っ直ぐな視線。
まただ。心臓が暴れ出す。


『いや…』


こんな所で何やってるの?そう続きそうになる口を、私はゆっくりと塞いだ。
だって…そんな事わざわざ聞かなくたって、理由はひとつ。

あの女の部屋を訪れていたに決まってる。

暴れる心臓とは裏腹に、思考は随分と冷静。
かと思ったんだけど。
あぁ…駄目だ。心臓まで落ち着いてきてしまった。
弱いなぁ…心臓も。私も。


「オイ、聞いているのか」
『えっ?あ…えと…』
「……用が無いなら呼ぶな」


アタフタする私に冷めた言葉を吐き捨てて、貴方は再び歩き出す。
待ってよ。言いたい事は山程あるんだから。


『ウルキオラ!』
「貴様、さっきから『なんで?』
「……何がだ」


一瞬、貴方の表情が珍しく歪む。
眉間に皺を寄せて、怪訝な顔をする。

そんな表情-カオ-も好きだなぁ…なんて。
だから、もっと見せてよ。






私じゃ駄目なの?

(…貴様、何が言いたい?)

(言えたら苦労してないよ)



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