I call your name.



 月が沈めば朝がきて
 雪が溶ければ春になる
 その自然さで


「ルキアー」
「何だ?」
「…何でもねェ」

 確かめるように名前を呼べば、ルキアはいつだって応えてくれる。

「ルキアー」
「だから、何だ」
「…何でもねェ」

 日曜日の昼下がり。

 ベッドでごろごろしながら、俺の机で熱心に本を読むルキアを何度も呼ぶ。

 だって、せっかくの日曜日だってのに。せっかく2人っきりなのに。
 何でこいつ、本読んでんの?

「ルキアー」

 本日何度目かの呼びかけに、ルキアは呆れたようにため息をつき、ようやく本を閉じてくれた。

「まったく、この糞餓鬼は本当に甘えん坊で敵わぬなー」
「…そういうセリフは声に出さないでもらえますか」
「む?すまん、聞こえたか」

 笑いながらベッドに上がり、俺と向かい合わせになるようにごろりと寝転ぶ。
 紫色の綺麗な瞳の中に、自分しか映っていないっていう、贅沢。

「貴様のな」

 その目を優しく細め、ルキアは俺の髪を撫でる。

「わたしを呼ぶときの、発音の仕方が好きだ」

 発音の、仕方?

「何だよそれ、名前の呼び方に発音の仕方とかあんのか?」
「何だ、知らぬのか」

 ルキアは大袈裟に目を丸くする。

「わたしが好きで好きで堪らない、というのがな、滲み出ておるぞ」
「…マジで?」
「マジだと思うか?」

 あー、と俺は声にならない声を出す。

「マジかもしんねー」

 実際その通りだし。
 そう付け足すと、ルキアはぶはっと笑った。

「どうした、今日はやけに素直ではないか」

 何かあったのか、と。

 目だけで問われ、何もなかったら甘えちゃだめなのかよ、と答える代わりに口を尖らせる。

「ふふっ」

 ルキアは髪を撫でていた小さな手を、今度は俺の頬に添えて。

「一護に呼んでもらえるのが、一番嬉しい」

 本当に嬉しそうに、そんなことを言った。

 俺はルキアと視線を絡めたまま、頬に添えられたその指と自分の指とを絡める。
 そん次には、たぶん足と足とを絡めるんだろう。
 そっから先のことなんて、今はまだわかんねーけど。

 でもきっと、どうしたって、ルキアが傍にいるなら幸せなんだ。


 闇を畏れて月を愛で
 凍えを憂えて雪を慕う
 その尊さを以って


 あぁ、俺は何度でも、


 君の名を呼ぶ。










小説を投稿してくださった皆様。
投票してくださった皆様。

本当に本当に、ありがとうございました。


早速ですが、見事!優勝されたこちらの小説…


☆19イチルキ☆を獲得された
鳴神さんの作品です。


僭越ながら…私達のコメント付きです。


奈「日常の何気ない雰囲気が良いですよね。好きで堪らないのが名前を呼ぶことでわかる、とか!」

百「声色ではなくその音なんですね。もう魂が込められてますよね彼の!好きすぎて!一護のその好きが詰まったその音(名前)を聞くたびにルキアも愛しいしあわせな気持ちになるんだろうと思うと、早く結婚したらいいと言ってしまいそうです」




そんなわけで。

惜しくも優勝は逃してしまったけれど、同じく素敵な作品達をご紹介していきます!

同立の場合は、五十音順にしています。

(名前の部分をクリックすると、小説が見られます。)




☆A千代さん☆


奈「読んでいて、とてもニコニコしちゃいますよね!なかなか起きないルキア・・・可愛い。。」

百「名前を呼んであの麗しいお顔が破顔したなら一護じゃなくても胸キュンしちゃいます!その胸キュンにアドレナリンが分泌されて脳内一部麻痺状態。名前を口にするだけでもドキドキ。結果無意識ちゅー。一護の慌てふためきっぷりは最高です」




☆ゆうさん☆


奈「ルキアが意図的に・・・というのは、現実になりそうでちょっと怖い気が。せつあまな感じが良いです!」

百「あのメンバーの記憶は消していないから現世と断絶しようとは思ってなかったと思ったり思ったり。いないのを自覚すると、いたことを確かめる為に呼んじゃうのですね。特に一護は敏感そうです。一層ルキアが愛しくなったに違いないと思います!」




☆夜乃紅花さん☆


奈「最後の、一護が名前を呼ぶ限りわたしはルキアなのだ、というのが胸打ちました。とても深いです。」

百「相手がいるから名前を呼んで貰えて、呼んで貰えるから自分が自分だと認識でき、名前は相手がいてこそ存在するのかなと思いました。ルキアにとっては誰でもない一護が呼んでくれること。素敵です!」





☆流牙 水さん☆


奈「家族設定のイチルキですね!何だかもどかしい二人が初々しくて良いですね。」

百「しあわせ満載で顔がにやけてしまいました。親バカで感きわまって泣いちゃうイチルキにもニヤニヤ。愛の言葉が照れくさくて言えない一護にもニマニマです。どんな名前が二人の口から紡がれるのか気になります〜」




☆舞方奈音☆


奈「あー・・・自分なんで(笑)すいません。」

百「まさかの悲恋でした(驚)ルキアが最後に遺したことばが切ないです。もういないルキアの名前をよぶ一護も恋しさだけじゃなくて後悔や自責の念が籠って切ないですー」




☆yanillaさん☆


奈「短いけれど、すごく想いがこもっていて良いですね!言葉もとても素敵です。」

百「名前はたくさんあるし同じ名前もあるけれど、そのひとだけのその名前、三文字のそのことば、その響きはとても特別ですね。愛しさが込み上げてきました!」




☆雪さん☆


奈「途中でしてはいけない遭遇をしたときは・・・ちょっとドキドキしましたが。お互い考える事は同じ、そんな二人が良いですね。」

百「パシリで噛ませ犬な恋次と何もかもお見通しなのであろう浦原さんは名脇役だと思います(笑)イチルキを刺激しつつ幸せにするために。きっとあの後のイチルキはラブラブなんだろうと妄想してます」




時間が無い中、こんなにたくさんの小説をありがとうございました。
本当にどれも『君の名を呼ぶ』に相応しい、素敵な作品ばかりで…。

私的には、一生懸命書いてくださったこの全ての小説はどれも一番だと思っています。

小説大会なんて…企画自体上手くいくか、とても不安でしたが。
盛り上がってもらえて、良かったです!


この大会に関わってくださった全ての皆様に、この場を借りて。感謝の気持ちを…

本当にありがとうございました!



普通の小説の投稿はまだまだ募集中です。
ぜひぜひ、終わってしまう前に素敵な小説をお待ちしています。





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