小説大会
□君の名を呼ぶ
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よく、初めて会う人などに名前を教えると、ルキアって素敵だね。朽木さんにぴったりだね。などと言われる。
しかし、“朽木さん”に“ルキア”がぴったりとはどういう意味なのだろうか…?
“朽木”という名字に“ルキア”という名前の響きがぴったりなのか、それとも『わたし』というものに『ルキア』というのがぴったりなのか…。
そもそも『ルキア』はただの名称で『わたし』を表すものではない。
いや、たしかに『わたし』というものを覆っている肉体、外見を表すものかもしれない。
だがそれは、その中にいる『わたし』を表すものではないのだ。
そういうと、一護は怪訝そうな顔で“ルキア”を見た。
一護の茶色の瞳にはルキアが映っている。
しかし、一護の瞳に映っている“ルキア”は本当に“わたし”なのだろうか?
――お前は馬鹿か?
と一護はいう。
馬鹿とは何だと私は返す。
――ルキアはお前で、お前はルキアだろ?
一護が指している“お前”とはこうやって悶々と考えている“わたし”のことなのだろうか。
しかし、それだけでは『わたし』が『ルキア』である証拠にはならない。
私はわたしがルキアだと言われてもしっくりこない。
そういうと、一護は笑いながら私を見た。
優しく微笑み、しっかりと私の瞳を見て、ルキアの中にいる“わたし”を見つめるように。
「ルキア」
と言った。
名字は黒崎に変わるかもしれないけれど、名前は変わんねぇからと言いながら“わたし”のことを“ルキア”と呼んだ。
何かが、私の中で変わった。
一護に名前といわれる魔法の呪文をかけられて、“ただのわたし”は“ルキア”になった。
確かにわたしは“わたし”であり“ルキア”なのだ。
わたしは目の前にいる一護に抱きつき、彼の耳元で
「私は確かにルキアだ」
と囁いた。
私を抱きしめる彼の腕の力が強まる。
私は、一護から“わたし”が“ルキア”だという証拠を貰ったのだ。
彼が“わたし”を“ルキア”と呼ぶ限り、わたしはルキアなのだ。
***END***
君の名を呼ぶ
君が名を呼ぶ
映画はまだ見ていないのであれですが、何となくな感じで。
2008/12/06 夜乃紅花