小説部門

□『さよなら』と云う言葉
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『さよなら』という言葉があるだろう。

学校等で最後に言う『さよなら』には“また明日も会おう”という意味も含まれているだろう。
しかし、『さよなら』の言い方、捉え方を変えると“もう会いたくない”や“これで最後”という意味を含ませる事も出来る。


だから私は『さよなら』という言葉を使うのが少し怖い。
もう逢えなくなってしまいそうで…。




「おい、大丈夫か?ボーっとして。」

「おっ、あ、すまん。 考えごとをしていてな。」

お前も考え事するんだな、と一護がルキアを冷ややかすとルキアは頬を膨らませる。

「私だって考え事くらい…」

「あんまり考え過ぎんなよ。」

えっ、ルキアが振り向くと一護は頬が紅くなる。

「いや、なんつぅか、お前は何時も下らない事でごちゃごちゃ悩み過ぎるからさ…。」




やはり、私は考え過ぎなのだろうか。
もしかしたら、私は『さよなら』という言葉が嫌なわけではなく、『別れ』が怖いのかも知れない。

だから私はこんなにも『さよなら』に恐怖を覚えるのか?




「なあ、一護。」

ルキアが切り出す。

「『さよなら』という言葉はどんな意味…だ?」

「は?どんな意味かって…そりゃ…うーん、言われてみると、よく分かんないな。」

でもいきなりなんだよ、と問う。

「いや、なんでもない...。」

とルキアが答えると、そうか、と一護が呟く。




やはりよく分からないので、帰ってから辞書で『さよなら』を引いた。

さよ‐なら
《「さようなら」の音変化》
1.[名](スル)
1 別れること。
2(多く複合語の形で用いて)
@野球で、後攻のチームが最終回に勝ち越しの得点をあげ、スリーアウトを待たずに試合を終わりにすること。
Aそれで物事を終わりにすること。それが最後であること。
2.[感]別れのあいさつに用いる語。
3.[接]それなら。
(『大辞泉増補・新装版(デジタル大辞泉)』提供:JapanKnowledge (C) SHOGAKUKAN 2006


と書いてあった。




「何調べてるんだ?」

声を聞くと、ルキアはあわてて辞書を閉じる。

「俺って...そんなに信用されてないのか?」

其の言葉にルキアは、そんなことはないぞ...、と慎重に答える。

「安心しろ。俺はお前の前から理由もなくいきなり居なくなったりしない。約束する。」

其の言葉を聞いて、ルキアは安堵の涙を流す。

「約束だぞ...。」

「おっ、おい!泣くなって!」

「私も約束する。私も...私も、理由もなくお前の前から居なくなったりしない。...絶対だ...。」




其の後、一護が言っていた。
「でも別れって、終わりじゃねぇと思うんだ。」
私が、どういう意味かと問うと、よく分かんねぇけどそういう気がするんだ、と言っていた。




其の夜。

「お前、そろそろ寝ろよ。」

「五月蝿い!今そうしようと思っていたところだ!」

一護が、素直じゃねえな、と苦笑いする。

「じゃあ、お休み、ルキア。」

すると、ルキアは少し暗い顔をしてああ、と答える。

「また明日、だろ。」

「おう!」




また、一護に救われたな。


 

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