小説部門

□水無月の夜
1ページ/1ページ


 夢を見る

 雨音に溺れて

 あの方が亡くなる

 毎日変わらぬ結末

 目が醒めても

 罪の意識は消えないのだ

 人間への

 死神能力譲渡の罪で

 苦しませているのだから

 ーー…一護



 その霊圧が誰のモノなのか、よく分かっている。

「一護…!何故来てしまったのだ!?」

 窓に駆け寄る。
 現世にいたあの時よりも、一護は格段に能力が伸びていた。
 だが……何だ、この霊圧の濁りは。
 まるで、そう、喩えるならば。

「虚に堕ちかかったのか…?」

 これでは海燕殿の二の舞ではないか。
 何故、私を助けようとする者は虚に堕ちかかるのだろうか。



「ルキア!!」

 聞き覚えのある声に振り向くと、居た。

「なぁーに座り込んでんだ?折角来たのに、その顔は何だよ」
「……ひ」

 ああ、一護は普通のつもりなのか……。
 しかし、これが一護だというのか?



 邪悪な骸骨に似たその姿が、普通だと?
 陶器のような肌の上で踊り狂うその紋様が、普通だと?
 まるで、普通の虚ではないかーー。



「ルキア」

 夢。
 いつもの声に起こされて、ルキアはふすまを開けた。

「む……お早う、一護」
「お、おぅ。珍しいな、まだ寝てたのか」
「今日は休日だ、馬鹿」

 目の前に立つ一護は死覇装姿だった。
 先刻まで死神稼業にいそしんでいたか。
 ……先日、一護は私や井上たちに虚化の事を教えてくれた。
 何故、今まで隠していた。
 何故、信用せぬのだ。
 横面を叩いた。
 そうでもせねば、この気持ちは晴れなかった。

 それで、あぁ、と思った。
 あの夢はーー虚化の事を聞いた私が、無意識に恐怖していたという事なのか。



 全く、くだらぬな。
〔END:Hello,Hollow.In the rain.〕

 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ