小説部門

□そこにいるんだから
1ページ/1ページ


 ーー空は蒼い

 そのくせに雨が降っている

 しかも寒かったり、心地よかったり、暑かったり。

 滅茶苦茶だ。

 時に《王の騎馬》と呼ばれる俺は、思わず愚痴を零した。
 仰向けに、空を仰ぎながら。

『…いい加減、白黒つけろよ』

 この内在世界の天気は、王の心身状態によって変わるわけだが……。
 いくらなんでも大荒れし過ぎる。
 俺は立ち上がって声をかけることにした。

『なぁ、王よ。テメェは何に悩んでいるんだ?』
「…お前に相談するか」
『はっ、何の為の騎馬なんだ?』

 背を向けている王が何に悩んでいるのか、俺はすでに見抜いている。

『あの死神に、未だに渡してないな?』
「黙れ!お前には関係ない!」

 そう言いながらもその横顔は頬を赤らめている。
 朽木ルキアという死神に、何かプレゼントを渡したいらしいが……理性が王を羞恥させているらしい。
 そういうのもあるから『理性を棄てろ』っつったんだよ。
 たかがプレゼントなのに、何故恥じる?

「だって……指輪買ったから」
『そんな歳で婚約指輪か!?』
「悪いか!」
『ンなこた無ェが、冗談にも程があるだろ?』
「冗談じゃねえよ。今までルキアと一緒にいて、離せなくなったっつーか何て言うか……」

 けっ、素直じゃねぇな。
 仕方ねぇな。

『ハッキリ言えよ。あの死神はここにいないんだから、言え』



「う…お……俺は、ルキアの事が好きなんだっつってんだ!」
「一護?」
「……あ?」

 聞き覚えのある声が、聞こえた。
 顔をあげると心配そうに覗き込んでいるルキアがいた。

「何を急に、私が好きだと言っておる」
「え…いや……ルキアさん…」
「はーん、さては寝こけておったか。このたわけが」

 ニヤニヤと笑ってくるルキアが俺の額に人差し指を突きつけた。

「ほれ、今度は本物がいるぞ。伝えるならばちゃんと私に言え」
「……はいはい」

 俺は苦笑いしながら、もう一度言った。
 ルキアが褒めてくれた。

〔END:wish for you〕
 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ