小説部門
□暖かい手。
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ハーッと白い息を自分の両手に吐き、少しでも暖めようと何度も擦り合わせた。
遊子に頼まれて一護と買い物に出たはいいが、うっかり手袋を忘れてしまった。
まだ11月とはいえ、今日はかなり冷え込む。
もしかしたら雪が降るかもな、とぼんやり考えていた。
「寒いな」
「そうだな」
隣を歩く一護の独り言のような言葉に軽く返事をする。
寒さのせいで口が開きにくくなった気がする。
再び両手を擦り合わせていると一護がちらりと私を見て口を開いた。
「ルキア」
答えるよりも前にグイッと引っ張られ、私の右手は一護の左手に包まれていた。
「少しは暖かいだろ」
そっぽを向いて話す一護の顔が赤い気がした。
「ん…暖かい」
幸せな感じがした。
そんな、冬の日。