小説部門

□純白の空の声
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――あの虚圏での壮絶な戦いから3年。






こっちに残る理由がなくなった朽木さんがあっちに帰ってしまってから2年半がたっていた。


朽木さんは一度だってこっちには来なかった。







「黒崎くん!一緒に帰ろぉー!」



「ああ良いぜ、井上」



あたしは黒崎くんと毎日の様に一緒に帰っていた。

でも、喜んでるのはあたしだけ…。




――今日は珍しく雨で。

隣の黒崎くんを見ると黙って空を見つめていた。

「黒崎くん?」

あたしの呼びかけにも返答は、ない。

多分この雨があの子の、純白の雪に変わらないかなぁ、とか…思ってるんだろうなぁ。

あの子はもう、ココには居ないのに。

黒崎くんの心には今も朽木さんしか居ない。



雪が、チラチラと。

もう春も終わりだという雪なんてあり得ない季節なのに、降りだした。

そう、それは。

彼女の作り出す純白の氷と同じ様に真っ白だった。



「…る…きあ……?」


あたしはきっと酷く悲しそうな顔をしたと思う。


でも黒崎くんには気にしている余裕なんて、ない。


「ルキアっ!?なあ、居るのか!?」




ふわっ、と。



黒崎くんの頬に後ろから小さな手が触れた。
懐かしい、真っ白な。


「…ルキア……」


「…中々、戻って来れなくて…済まなかった、な………」


そう言った朽木さんの声は酷く弱々しかった。黒崎くんは朽木さんをぎゅっと抱き締めた。


場違いなあたしはそっと、その場から消えた。





End

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