オリジナル

□箱
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「あ、電話の配線は繋いでおかないと。電話どこだろ?」
独り言ちりながらリビングに積まれた箱を見ようと身を乗り出す。
すると「もう業者にやって貰ったよ」とダイヤルで遊びながら笑う声がした。
「気が利くだろ。」
「本当に気が利く人は自分でそう言わないんだ。そろそろお茶を入れよう、一息煎れよう。」

小さなちゃぶ台に揃いのマグが並ぶ。大きなテーブルが届くまでの間はこれを囲む事になる。俺は正座をしかけたが、目の前で胡座を掛かれたのでそれに並んだ。
「これどこで買ったのさ。」
お茶を注ぎながら真っ青のマグを手渡す。
「何で、気に入らない?」
ズッと一口啜り、旨いと呟きながら返される。
「逆。綺麗な青だね。俺好きだよ、この色。」
こちらもお粗末様ですと呟きながら返事をする。
「本当?良かったぁ。お前普段から好きなものとか言ってくれないから、大分迷ったんだぜ。」
俺から見えるか見えないかの位置で小さくガッツポーズを作り、残りのお茶を一気に飲み干している。
2杯目のお茶を注ぎながら「懐かしい色だね。」と呟いたが、聞こえていない。
良かった様な、良くない様な…複雑な気持ちになった。
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