純情部屋(Short Story)
□受☆攻
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…俺は今ちょっと困ったことになっている。
――――いや
凄く、困っている。
というかその前に、まだ信じられない。
こういうのは本やドラマの中の話であって、実際に起こる事だとは思わなかった。
こんな事………誰も信じてくれない…………よな。
「あ〜、くそっ」
苛々して机を叩くと本の山が音をたてて崩れる。
「あ〜ヒロさん、机が可哀相ですよ。それにほら、これ資料で使う本じゃないんですか?駄目じゃないですか、こんな風に扱っちゃ…」
そう言って崩れた本を揃える……俺、の姿をした、野分。
いや
別に野分が俺と同じ恰好してるとか、そういうんじゃなくて………。
俺と野分の中身が
入れ代わっている。
SFとかに出てきそうなやつ……。
しかし実際同時に雷に撃たれたからとか、思い切り頭を衝突させたとか、そういう事は何一つなく…ただ朝目が覚めたらこうなっていたのだ。
つまり、
原因不明……。
しかも俺は運良く冬休み中だから良かったものの、研修医である野分には冬休みなんてものはない。
だからって俺が病院に行くなんて事はとうてい無理な話な為、野分はインフルエンザと偽って仕事を休む事になった。
大事な時期なのに………。俺が野分のように病院へ行って勉強してくるだなんて無理だって事は分かっている。だからって役に立てなかった事がちょっと悔しい……。
おまけにこれは俺が外出するのを許さない事態にある訳で……、この冬休み古本屋巡りをしようと意気込んでいた俺は出鼻をくじかれた。
それにまだ書きかけの論文もある。
その資料やら足りなさそうなディスクカードやらは全て野分に面倒してもらわなくちゃいけなくて…。
不機嫌な俺は、俺の世話が出来るとか言ってすっかりご機嫌な俺の笑顔を見せつけられてさらに機嫌を悪くする。
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