Text[いちラキ]
□【関係】
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「よく考えたんだけどさー、やっぱりそういうことだよなぁ」
「ああ?チビ、お前なに言ってんの?」
清嶺にもたれかかったまま、宝はその愛らしい顔だけを彼のほうへ向け、そう言った。
話を振られた、当の本人の頭上には、たくさんのハテナマークが飛んでいる。
「いや、だからさぁ」
「さっさと言えよ」
急かす清嶺とは対照的に宝は何故か言いにくそうで。
それなら最初から言うなよ。なんて、ツッコミたいのは清嶺だけでないはずだ。
「亜也子さんと親父って」
「言うな!俺はまだ認めてねぇ!」
「そうは言ってもさー、もう婚約しちゃったじゃん。諦めろって」
「うるせぇ!!」
清嶺はこれ以上聞きたくないとばかりに、布団に包まり、あまつさえ、耳まで塞いでしまった。
そんな清嶺に、宝のイタズラ心に火がついたのかどうかは知らないが、彼はニヤリと笑い、布団を勢いよく剥ぎ取った。
そして耳元で一言。
「ね?お・じ・さ・ん」
「…………は?」
「だからさ、亜也子さんと親父が結婚したらさー、お前、オレの叔父さん」
「……誰が?」
「お前が」
「誰の?」
「オレの」
その後、308号室から悲鳴が聞こえたとか、聞こえなかったとか。
さて、どっちの悲鳴でしょうか?