Text[いちラキ]
□【兄弟】
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「なに?俺のこと呼んだ?」
「うわ!!」
突如、肩を掴まれ灯二は勢いよく後ろに引っ張られる。
もちろん、犯人は決まっている。
千鋃千艸。
灯二達の仲間で、虹いわく羅貫マニア。
羅貫自身はその使い方間違ってると否定しているが。
まぁ、とにかくその男がにこにこと胡散くさい笑みを浮かべながら灯二を見つめていた。
「ったく、急に引っ張るなよ!びっくりするだろーが!」
「ああ、ごめん。それで?」
灯二の文句に、千艸は全く悪びれた様子もなく謝る。
「……ちょっと訊きたいことあってさ」
些かムッとしながら、灯二は自分にいつものことだと言い聞かせることにした。こんなことで怒ってたら身が持たないと。
灯二は怒りを抑えながら、本題に入る。
「兄弟って一緒に寝るもんなの?っつーか、どうやって接したらいいんだ?」
「ああ、それを悩んでたのか?そうだな、俺も記憶がないから何とも言えないけど……」
「うんうん、それで?」
気づいたら、灯二と千艸は揃って、その場に顔を近づけるようにして座り込んでいた。
その様子を遠巻きに数字の子達が眺めているのは、彼らは気づいているのかいないのか。
「とりあえず、俺で練習してみたらどうだ?」
「おまえで?」
普通の人ならば、ここで「馬鹿か?」って言う場面で。
やはり、灯二も天然だった。
「なるほど!おまえ賢いなぁ!!」
すぐに千艸の意見に納得した。にこにこと可愛い笑顔で。
「じゃあ、とりあえず俺のことはお兄ちゃんって呼ばなきゃだめだから」
「わかった!!お兄ちゃんだな!!」
成り行きを見守っていた数字の子達はざわめき始め、遠くの方では、「主匪呼んで来い!」と誰かが叫んでいる。