∞短編の間∞

□サードオニキス
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《サードオニキス》



ヨーロッパの某国。ルパンのアジト。

古城をアジトにしているのでお子ちゃまな翠は散歩と称してアジト内を探検していた。何にでも興味があるのかアジト内にある壷や装飾品などツンツン触ったり見たりして彼女なりに楽しんでいるようだ。

「………?」

廊下を歩いていると一枚の絵が視界に入り彼女は立ち止まる。

「………綺麗!」

彼女の目の前に飾ってあるのは一人の女性のウエディングドレス姿の絵だった。翠はその絵に夢中なのかジッと見つめている。

「よお!翠、散歩楽しんでるか?」

そこへアジトの主であるルパンが通り掛かり翠に声をかけてくる。

「翠ちゃん。この絵に興味持ったの?」

「……ルパン。この絵綺麗だね……」

絵をジッと見つめる彼女にルパンはニカッと笑い。

「この絵は俺のお袋が親父と結婚する時に描いて貰った肖像画らしいよ!」

「……ルパンのお母さん?綺麗な人だね。そして幸せそうだね……私もこんなドレス着たいな……」

彼女の言葉にルパンは彼女が大好きな相棒の姿を頭に思い浮かべながら「アイツも翠ちゃんの年齢が邪魔して躊躇してんのかねぇ?」と思うのだった。



次の日。
次元がアジト内に居るであろう翠を捜していた。リビングや台所、物置などを覗くが何処にも姿が見えない事に次元は困ってしまう。広い庭にも出て捜すが翠の姿は見えず次元は庭の大木の下に行き愛煙草のペルメルに火を点け煙を吐きながら。

「……翠の奴。何処に行ったんだ?」

「……次元。呼んだ?」

大木の葉の中から翠がいきなり頭のみを逆さ状態で出したので次元はビックリする。

「ブッ!ビックリさせんじゃねぇ!この馬鹿!姿をちゃんと見せろ!」

ペシッ!と彼女の頭を叩く。翠は次元の言葉に素直に大木の葉の中から姿を現す。

「……まあ、見つかって良かったぜ。翠、ちょっと後ろ向け」

「?」

素直に翠は後ろを向くと次元はポケットから何かを取り出すとそれを彼女の首へ。

「ちょっと大人しくしてろよ……よし!」

彼女の胸元にはハート型の宝石のペンダントトップのネックレスがあった。

「ネックレス?」

「サードオニキスのネックレスだ」

翠はペンダントトップを手のひらに乗せて。

「……次元。ルパンが言ってた!宝石には一つ一つ意味があるって!これは何て意味?」

彼女が問うと。次元は帽子を深く被り、

「自分で調べろ。誰の手も借りずにだ!」

首を傾げる彼女に次元は優しく頭を撫でてやり。

「それが分かったら、全部教えてやるよ!」

「分かった!調べる!」

次元の言葉にやる気を見せた翠は猛ダッシュでアジト内へと走って行った。そんな彼女を見送りながら。

「……サードオニキス。愛、夫婦の幸福、幸せな……フッ、ロマンチストか……」

そう呟くと彼女を追うようにアジトへと歩き出すのだった。




アジト内。
翠は走りながら次元から貰ったサードオニキスのネックレスを眺めていた。初めての次元からのプレゼントに無表情だが嬉しいオーラを出している。

「……あ!この宝石の意味を調べないと……次元一人でやれって言った……」

持ち前の身軽さで壁や階段をジャンプで飛び越え翠はアジトの図書室へと向かう。図書室に到着するとまず驚いたのは蔵書の多さと部屋の広さだった。翠はインクの独特の臭いと埃にまみれた室内に躊躇せずに足を踏み入れ宝石関係の蔵書を探し始める。本当はパソコンで調べたかったがパソコンを使うにはルパンの部屋に侵入しないと行けないので次元の一人で調べろと言われたのが守れなくなると思った翠は地味に図書室で調べる事を選んだのだった。

「……本。たくさん……」

埃まみれになりながらも彼女は一冊、一冊中身を確認しながら目当ての本を探す。探し始めて二時間程してから翠は目当ての本を無事に見つける事が出来た。

「……サードオニキス。……西洋、東洋において【清純】【貞節】を持ち【乙女】の象徴。強い守護の力を持ち悪縁を断ち切る力を与えてくれる……え〜と、他は……」

本を読み進めていく。サードオニキスの所を全て読み終えると翠は本を閉じると同時に図書室から飛び出す。そして、アジト中を走り回り次元を捜す。

「次元!」

目的の人物は昨日ルパンと眺めていたウエディングドレス姿のルパンのお母さんの肖像画の前を丁度歩いている所だった。

「どうした?翠」

彼女の声に肖像画の前で立ち止まる次元。そんな彼に翠は思い切りジャンプして抱き着く。かなり勢いがあった為、次元を巻き込んで床に倒れ込む事になる。

「こ、この馬鹿!もう少し考えて抱き着け!」

怒鳴る次元を無視して翠は彼の腹の辺りに馬乗りになった状態で嬉しそうなオーラを出しながら。

「次元!サードオニキスの意味調べたよ!清純、夫婦の幸福、夫婦の和合、愛、幸せなけっ……」

翠が全ての言葉を言う前に次元の手が彼女の後頭部に回りグイッと引き寄せると同時にキスをする。

「……!」

「合格だ!」

意地の悪い笑みを浮かべながら次元はペロッと自分の唇を舐める。翠は彼からのキスに無表情ながらも顔を真っ赤にさせる。

「じ、次元!」

「最後の意味はお前が16になってからな。それまでこれが婚約の証って奴だ……」


ネックレスの鎖に軽く触れながら次元は彼女にまたキスをする。今度は長めのキスを。翠はそんな彼のキスに素直に応じる。応じる時に翠の目には壁に架かった肖像画のルパンのお母さんが優しく微笑んでいる様に見えたのだった。



最後の意味【幸せな結婚】







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