book3

□世界にひとり
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46億年、世界はひとりぼっちなんだね


君は体育館の冷たい床に頬を寄せて目を閉じた。

汗が額を伝う俺は肩で息をしたままそれを見つめる。


「途方もないね」
「どんな気分なんだろう」
「分からないけど俺はしたくないなぁ」
「仙道くんはひとりにならないよ」
「ん、なんで?」
「私がいるから。」
「じゃあ君もひとりにはならないね」
「そうだね」


寝そべったままの彼女の横に
座って、
短い髪を優しく撫でると
八重歯をみせて笑う


「世界の心臓の音が聞こえるよ」


床に耳を押し当てて
愛しげに睫を揺らす彼女の頭をそっと持ち上げて
自分の胸に誘導する


「俺の音も聞いてよ」
「君を想ってるよ」
「世界の誰よりも」
「俺の君の音だ」


きれいな音だね、


彼女はしなった腰を正して、
汗で湿った俺の髪の束を梳いた。


「目を瞑ると仙道くんの世界にひとりになる」
「眠りたくないから」
「話をしてて」
「ひとりにしないで」


しょっぱくて甘いキスを3度交わして
彼女の舌の上でわかったよ、と返事をした。


宇宙は限りなく広いけど
世界は限りがあるよ。
私達にも限りがあるから
世界はいつまでもひとりぼっち
可哀想でいじらしいね
でも私達は狡いから
ふたりでいられればいいや



瞼とおでこにキスをして
鼻の頭をぺろりと舐めて


「俺も、君がいればいいよ」



世界を裏切った。





(いや、世界はひとり。)



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